都市の暮らしが快適な反面、「都会ではできない自然の中での体験」が若い世代を中心に注目が高まっています。
リモートワークの普及やライフスタイルの変化により「拠点を2つ持つ暮らし」、すなわち二拠点生活のハードルが下がりました。
ですが、その実現には「暮らし設計」、「物件選び」、「維持」という3つのハードルがあります。
今回は、二拠点生活を成功させるための「暮らし設計」と「物件選び」のポイントをご紹介します。
なぜ二拠点生活を選ぶのか

都市部での暮らしは通勤・買物・教育・医療など利便性が高く、仕事や日常生活を支える基盤として優れています。
しかし、週末や休暇には「自然の中で子どもと遊ぶ」、「趣味(山・川・海)に繰り出す」、「家族との時間をじっくり取る」といった価値を求める声が増えており、それを満たすには地方・郊外という選択肢が有効です。
実際、国土交通省が2022年に実施した「二地域居住に関するアンケート」では、二拠点生活を行っていると回答した人は全体の6.7%で、日本の総人口に換算すると約701万人と推計されています。
 また、現在二拠点生活をしていない人でも、約3割が関心を持っていると回答しています。 
こうした背景は、家族の時間を大切にしたい、自然を暮らしに取り込みたい、という価値観の変化とも合致しています。
二拠点生活の「暮らし設計」

まずは暮らし方を考える
二拠点生活を始めるには、まず「どう暮らすのか」を考えましょう。
それには「滞在の頻度・移動パターン」を明確にすることが重要です。
例えば、平日は都市部の拠点、金曜夜~日曜夜は地方拠点、長期休暇は地方拠点に長逗留、というモデルを想定できます。
 その際には「移動時間」、「荷物の持ち運び」、「移動費用」、「休暇リズム」などをあらかじめ想定しておくことで、拠点間の生活がストレスになりません。 
加えて、家族構成、学区、医療・通信インフラ、趣味(キャンプ・釣り・山遊び)を拠点にどう取り入れるか、を押さえましょう。 
たとえば、「拠点でのWi-Fi・リモートワーク環境」、「趣味道具を常置するか都度持ち運ぶか」、「休日拠点での車移動の有無」なども想定すべきです。
コスト視点からも考える
二拠点生活では、住まいの数が増えるだけでなく、移動や、光熱費・維持費などのコストも増加します。
実際に二拠点生活をしている人に聞くと、初期費用として数十万円~100万円程度、ランニングコストとして通常の生活と合わせて1.5倍~2倍になると言われています。
具体的には、賃貸であれば敷金・礼金・仲介手数料・家財購入など、物件購入であれば物件取得・登記・リフォーム費用などがかかります。
さらに、月々の固定費(家賃/ローン・固定資産税・光熱費・通信費)+変動費(交通・滞在中の生活費)を試算する必要があります。
したがって、二拠点生活を検討する際には「どこに価値を置くか(趣味・家族・住環境)」、「予算の上限」、「移動頻度・拠点間距離」の3要素を早めに整理しておくことが、成功の鍵です。
二拠点生活の「物件選び」

立地・拠点タイプの選び方
物件選びの際は、「都市拠点⇔地方拠点」のバランスが肝です。
都市拠点は仕事・教育・医療を支える軸として、コンパクトで利便性の高い物件を選び、地方拠点は趣味・自然・リフレッシュを重視して少し広め・アクセスがほどほどの地域にするというメリハリが有効です。
また、地方拠点を「週末拠点」として使うのか、「将来的移住を見据えた本格拠点」とするのかにより、賃貸か購入か・物件グレードも変わってきます。
さらに、移動時間は2時間以内を目安にすることが、継続性を保つためには現実的という話もあります。
中古戸建・空き家バンクを活用
昨今は二拠点生活の拠点やセカンドハウスに、自治体の「空き家バンク」制度を活用し、低価格な中古戸建を取得するケースも増えています。
築古物件のDIYなども人気ですし、コストを抑える上で有力な選択肢です。
ただし、築年数が古い・設備が老朽化している・メンテナンスに費用がかかる等のリスクも同時に存在します。 
特に水回り設備に関しては、専門業者にお願いすることになるため、すべての水回りを交換するとなると、数百万円もかかるケースがあります。
そのため、物件を選ぶ際はどの程度修繕が必要なのかも調べておきましょう。
更に、見た目や設備はもちろん、断熱、耐震といった建物の躯体に関すること、アクセス・買い物・医療機関の距離などの周辺環境もチェックしておくことが重要です。
また、将来的に「賃貸化・貸別荘運用」の可能性を視野に入れるなら、物件の用途・地域の規制・利便性も併せて検討すべきです。
建物の管理や維持コストも考えておく
二拠点生活で拠点を所有する場合、維持・管理が欠かせません。
都市部と自然の多い地方とでは、住環境が全く違うため、地域ならではの維持メンテナンスが必要となってきます。
特に庭がある場合は庭木の管理や除草が必要となってきます。
庭木の越境や落ち葉が近隣トラブルになることも多いため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
降雪地域の場合は雪かきも必要となってくるでしょう。
また、季節や、家族のライフスタイルの変化によっては、訪れる頻度が低くなることもあるでしょう。
その場合には、建物の維持や防犯面から、建物を管理してくれる業者を探しておくと安心です。

成功&失敗事例から学ぶ二拠点生活のコツ

成功パターン(家族+アウトドア趣味編)
東京都在住の40代会社員Tさんは、週末のリフレッシュと家族時間の充実を目的に、千葉県外房エリアで二拠点生活を実践しています。
拠点は中古戸建を購入し、物件費を抑えつつ、必要最低限のリフォームで快適な生活空間を整えました。 
月々の維持費も光熱費や通信費を含めても都市部拠点の維持費と大きく差がなく、予算内で運用できています。
移動面では、都心から外房まで車で約2時間。
週末金曜夜に移動し、日曜夜に帰宅するスケジュールを組むことで、通勤疲れや渋滞ストレスを最小限に。
趣味の釣り道具は地方拠点に常備し、都市拠点との荷物の行き来を減らす工夫をしています。
地域との関係性も良好です。
自治会に登録し、近隣住民との交流を定期的に行うことで、防犯や空き家管理に関する情報共有もできています。
地域イベントにも子どもと参加することで、家族全員が「暮らす感覚」を実感でき、満足度が高い二拠点生活を送っています。
失敗・注意すべきパターン
一方で、東京都在住の50代男性Bさんのケースでは、二拠点生活で思わぬ課題が生じました。
登山が趣味のBさんは山の中の暮らしに憧れ、都市部から車で3時間以上かかるものの、山間部の物件に一目ぼれをして購入。
土曜に移動するため、行楽シーズンなどは道路渋滞が頻繁に発生し、移動ストレスを感じるように。
コスト面では、築40年以上の中古戸建を購入したため、初期費用は抑えられたものの、維持費が予想以上に膨らみました。
屋根の補修や木の剪定など、次々と出てくる建物の修繕や管理、害虫対策に加え、交通費も毎週末発生するため、都市拠点との維持費差が大きくなっています。
地域との関係も問題となりました。
週末のみの滞在で、滞在中も山へ出かけていることが多いため、地域住民との交流がほとんどなく、防犯面や情報共有が不十分で、近隣トラブルへ発展。
この結果、滞在中の不便や負担感が増し、二拠点生活を継続するモチベーションが低下してしまいました。
この比較から、二拠点生活の成功には「物件コストと維持費のバランス」、「移動時間」、「地域との関係構築」の3点が大きく影響することがわかります。
特に家族が滞在する場合は、アクセスや地域関係性まで含めて総合的に計画することが重要です。
まとめ
今回は、二拠点生活を成功させるための「暮らし設計」と「物件選び」のポイントをご紹介しました。
- 二拠点生活「暮らし設計」は滞在頻度、何をしたいか、コストを考える
- 二拠点生活「物件選び」は取得コスト以外に、修繕の有無、維持コストも
- 二拠点生活を成功させるには、コスト、移動時間、地域との関係構築がカギ

