「都市で暮らしながら、地方にも生活拠点を持つ」
そんな二地域居住・多拠点生活を検討する人が増加傾向にあります。
背景には、2024年11月に施行された「改正広域的地域活性化基盤整備法」があり、各自治体が「特定居住促進計画」を策定することで、地域の活力向上と二地域生活者の受入れる仕組みが整いつつあります。
今回は、特定居住促進計画を策定している自治体と、活用する私たちにとってのメリットなどをご紹介します。
特定居住促進計画とは

「特定居住促進計画」は、2024年11月に施行された「改正広域的地域活性化基盤整備法」に基づく新しい制度です。
この法律改正により、 都市部と地方の両方に生活拠点を持つ「二地域居住」 を地方創生の視点で支える仕組みが整いました。
二地域居住とは、都市生活の利便性を維持しつつ、農山漁村など地方にも生活拠点を持つ暮らし方を指し、地域への関係人口や多拠点生活の拡大が期待されています。
特定居住促進計画は、市町村が地域の特性を踏まえて策定するもので、 住まいの拠点整備、利便性向上・就業機会創出、地域との交流支援 など、二地域居住を促進するための方針や施策を盛り込むことができます。
計画策定にあたっては、支援団体となる 特定居住支援法人の指定や協議会の設置 など、官民連携の体制づくりも制度として位置付けられています。
「改正広域的地域活性化基盤整備法」とは
「改正広域的地域活性化基盤整備法」 は、2024年11月1日に施行された法律で、都市部と地方など 複数地域に生活拠点を持つ「二地域居住」 を国が促進し、地方への人の流れを創出・拡大することを目的としています。
制度は、住まい・なりわい・コミュニティの3つを重視した二地域生活支援の法的枠組みであり、地方自治体が「特定居住促進計画」を策定できる仕組みを新設し、空き家活用・仕事環境整備・地域交流支援などの施策を進める根拠を整えました。
また、民間企業やNPOを「特定居住支援法人」として指定する制度や、自治体・住民・支援団体が協議する「特定居住促進協議会」の設置も可能としています。
「特定移住促進計画」を公表している自治体(一部)

以下は、特定居住促進計画や関連事業を策定・実施している一部の自治体をご紹介します。
1. 佐渡市(新潟県)
「暮らし」「なりわい」「コミュニティ」を結ぶ島の生活基盤
佐渡市は、離島ならではの自然・文化資源を活かして「佐渡市特定居住促進計画」を策定しています。
計画では、都市と地方の往来を想定した二地域居住促進区域を設定し、移住体験住宅や関連施設を整備することで、生活と仕事、地域との結びつきを支える枠組みを設けています。
この計画では、地域の人口減少や若者流出といった課題に対応するため、移住・定住だけでなくノマドワーカーや企業・起業家との交流を通じた関係人口の拡大を図ることが明記されています。
佐渡市は観光資源が豊富な島であり、地域外からの関係人口と地域の活力を結びつける支援が特徴です。
また、佐渡市では 特定居住支援法人の指定申請 を受け付けており、地域内外の団体・企業と連携した支援体制の構築も進めています。
これにより、移住希望者や二地域居住者が情報提供や相談支援を受けやすい体制強化が進んでいます。
2.那須町(栃木県)
観光・自然資源を活かした二地域生活の受入れ基盤づくり
栃木県北部に位置する那須町は、豊かな自然や温泉、観光資源を背景に、2025年10月に 「那須町特定居住促進計画」 を策定しました。
那須町は東京から新幹線で約70分とアクセスも良く、首都圏からの関係人口や二地域居住者を受け入れる環境づくりを進めています。
施設整備の柱としては、コワーキングスペースの「ワークベース那須」、地域交流の「まちなか広場」、住まい支援の「ウイングヴィーナス」や「定住促進住宅あたごハイツ」などの拠点を計画・運営しています。
これらは、二地域居住者が働き方や暮らし方を柔軟にデザインできる場になることを目指しています。
さらに那須町は、地域資源を活かした観光・農業・林業などへの関わりや関係人口の拡大も重点施策として位置づけ、官民連携による取組みを通じて新しい“暮らし方・働き方”を地方で実現できる基盤づくりを進めています。
3. 塩尻市(長野県)
3地区の特色を活かした田園都市型の二地域居住支援
長野県塩尻市は、県内で初めて 「塩尻市特定居住促進計画」 を策定し、二地域居住(都市と地方の複数拠点生活)の受け皿づくりを進めています。
この計画は、二地域居住を通じて都市部と地方の人の流れを創出・拡大し、地域活性化につなげることを目的としています。
計画は 「住まい」「なりわい」「コミュニティ」 の3つの視点を軸に、官民連携による施策展開を重点的に位置付けています。
市内では、大門地区・北小野地区・楢川地区 の3つの特定居住促進区域を指定し、それぞれの特色を生かした拠点整備を進めています。
大門地区ではコワーキングスペース「スナバ」やシェアオフィス「core塩尻」などの交流・仕事支援施設があり、都市生活者の活動や起業支援に対応します。
北小野地区では移住お試し住宅や若者定住促進住宅、楢川地区では森林ハブ拠点や宿泊滞在施設などが整備され、段階的な移住検討や滞在・生活体験がしやすい環境が整っています。
この計画は、交流の機会提供や空き家バンク運営、移住・二地域居住の相談窓口開設といった支援体制も含め、単なる住まい支援にとどまらず、暮らし・働き方・地域参加の3方向から地域に溶け込む基盤づくりを重視しています。
4. 焼津市(静岡県)
港町の魅力を軸に「海×チャレンジ」で二地域生活を促進
静岡県の港町・焼津市は、人口減少や地域活力の維持という課題に対応するため、「焼津市特定居住促進計画」 を策定し、都市部と地方の二地域居住の受入れ環境整備を進めています。
港の旧漁具倉庫をリノベーションした複合拠点「焼津PORTERS」を整備し、コワーキングスペースや宿泊施設、コミュニティスペース、フードコートなどを備え、都市生活者やテレワーカーが仕事・交流・滞在を一つの場で実現できる環境をつくっています。
また、体験型ゲストハウス「庭の宿 帆や」や子育て支援拠点「ターントクルこども館」など、多様な世代が関われる交流の場も計画に位置付けられています。
この計画は、二地域居住者を地域内外に広める「二地域居住アンバサダー制度」を導入するなど、地域の魅力発信や継続的な関係づくりを重視しています。
さらに、特定居住支援法人の指定により、相談支援・情報提供・関係人口づくりを官民連携で推進する体制も整備しています。

利用する側のメリット・デメリットは?

ここまでは、自治体の取り組みについてまとめてきましたは、実際に利用する側にとってどのようなメリットがあるでしょうか。
ここではメリットと注意点をご紹介します。
利用する側のメリット
- 住まい支援が制度化される
空き家活用や居住関連施設整備など、計画に基づいた受入れインフラが整備されつつあります。
- 仕事と暮らしの選択肢が広がる
地域資源や地域企業との連携支援が進み、都市生活との両立やテレワーク拠点としての生活設計が可能です。
- 地域交流の機会が制度設計される
自治体や支援法人による交流支援が計画に含まれることで、地域住民との関係づくりが促進されます。
注意点
- 制度の成熟度に差がある
計画は自治体ごとに進捗が異なり、住まい支援や就業支援の内容が地域によりバラつきがある点は注意が必要です。
- 生活インフラ課題が残る場合がある
都市部と比べ、交通・医療・教育といった日常生活インフラは自治体の課題として残る場合があります。
- 実費負担がかかる
いくら支援制度があっても、移動費や実際にかかる生活のコストは利用者側の負担となります。
まとめ
今回は、特定居住促進計画を策定している自治体と、活用する私たちにとってのメリットなどをご紹介しました。
- 特定居住促進計画は二地域生活を支える制度的な枠組みである
- 地域を選ぶ場合は、住まい・仕事・交流の3軸で自治体を比較することが重要
- 制度の成熟度に差があるため、現地での確認は必須


