自分が空いている時間や土日だけ副業がしたい、という方は増えてきています。
副業で人気のある職種の1つが飲食業。
その中でも人気があり、年々増加しているのが「キッチンカー」です。
オフィス街や商業施設、観光地のイベントで目にすることも多いですよね。
今回は副業でキッチンカーを開業ために必要な開業の手順からメニュー決めのコツまでをご紹介します。
キッチンカーと移動販売

キッチンカーとは「キッチン設備を備えた移動販売車」のことを指します。
販売する商品は調理済みの食べ物や飲み物となります。
作られたお弁当の移動販売とは違い、注文されてから加熱や盛り付けといった簡単な調理を行って提供する事が特徴です。
車に積んでいるキッチン設備で食べ物を作って販売するスタイルという意味では、タコ焼き、ラーメン、おでんなどの屋台もキッチンカーに該当します。
ただ、キッチンカーというと昔ながらの屋台ではなく、ケバブやクレープ、エスニック料理などおしゃれな料理をイメージする人が多いようです。
日本で人気の背景
キッチンカーの発祥は、1920年代のアメリカとされています。
しかし日本では江戸時代に寿司やおでんの屋台が存在し、その中で天秤棒を持って売り歩く行商が広く見られるようになり、これが移動販売の起源とも言われています。
大正以降はリヤカーが発明され、今ではおなじみのラーメン、石焼き芋などが移動販売を開始します。
そして戦後は、主に戦災で店舗を失った人たちが生活の為に、日々の食料や物資を販売するようになりました。
1990年以降は、都心のオフィス街、行楽地やイベント会場などで、ハンバーガーやカレーなど多種多様なキッチンカーが見受けられるようになり、徐々に一般に浸透し始めました。
また、震災時に大手食品メーカーやチェーン店が、キッチンカーで被災地域の支援を行ったり、新型コロナウイルスが感染拡大した時には、飲食店数が減少した中で、キッチンカーの営業許可件数は増加し、災害時の社会インフラも担っていると言えます。
副業でキッチンカーはできる?

最近では副業への高まりから、平日は本業、休日は副業でキッチンカーという人が増えています。
副業としての人気の理由は自分で決めた日時に、決めた場所で営業できる点や、通常の店舗型飲食店よりも初期費用が抑えられるため挑戦しやすいという点があります。
また、いずれは自分のお店を持ちたいという人にとっても、スモールスタートで始めることでお客さんのニーズを聞くことができたり、移動可能なキッチンカーだからこそ出店場所の調査にも生かせるというメリットがあります。
しかし気をつけたいのが、キッチンカーの営業には食材の準備や調理時間があるということです。
出店当日に調達、その場で調理できるものであれば良いですが、前もって準備が必要という場合は本業に影響がでないようスケジュールを組む必要があります。
また、住んでいる所からあまりにも遠いエリアでの出店は、移動時間も必要となってくるため、エリア決めも慎重に行いましょう。
キッチンカーを開業するには?

step1 営業計画を立てる
まずは、キッチンカーの営業計画を立てましょう。
計画は以下の項目で立てると良いでしょう。
- キッチンカーのコンセプト
- 提供メニュー
- 出店エリアの候補
- 車両の取得方法
- 開業資金と運転資金の計画
計画にあたっては、キッチンカーや飲食業に関する情報収集をすることが必須です。
競合や出店候補場所の情報収集や調査はしっかりと行いましょう。
step2 資金の準備
キッチンカーの開業資金は、およそ300万円〜800万円と言われています。
また、資金の大部分はキッチンカーの車両代となります。
キッチンカーの車両は新車か中古、購入かレンタルで大きく変わってきます。
キッチンカーで食べ物を販売する場合、食べ物を調理するための調理器具も必要になります。
鉄板(焼きそば、お好み焼き用)であれば7〜10万円ほど、ケバブマシーンは7〜8万円ほどかかります。
しかし費用はあくまで目安で、業務用やプロ専用の機材などモノによってはかなり高いものもあります。
また、容器や販促品にかかる費用も予算立てておきましょう。
キッチンカーで飲食物を販売するのであれば、使い捨ての容器は必須です。
例えば、ドリンクを売るときの紙コップや、カレーを盛るためのトレーなどがあります。
販促品とは、商品の購入を促すためのチラシや看板、ショップカードがあたります。
販促品は看板でおよそ3,000円〜2万円、チラシは数千円から〜3万円ほどかかります。
step3 食品衛生責任者を取得する
キッチンカーを営業するためには保健所の営業許可を取得する必要があります。
その際に必要になる資格が「食品衛生責任者」です。
上記は、各自治体が開催している食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得できます。
飲食業が未経験でも受講することができるので、キッチンカーの副業で初めて飲食業に携わる方でも受講できます。
最近では、忙しくて講習会を受講しに行けない方もいるため、オンラインでも受講可能な自治体が増えています。
step4 キッチンカーの取得
続いてキッチンカーを取得します。
キッチンカーを取得する方法には、おおまかに分けて以下の4つの方法があります。
- 所持している車を改造してもらう:約100万円〜130万円
- キッチンカーを購入する(新車、または中古):約200万円〜300万円
- キッチンカーをレンタルする:1日約5万円、1週間約18万円
ご自身の状況や営業頻度に応じて、改造・購入、またはレンタルを検討しましょう。
step5 営業許可を取得する
キッチンカーを開業するには「飲食店営業許可」が必要です。
営業許可は出店する地域の管轄保健所となるため、出店エリアは事前に決めておきましょう。
営業許可の有効期限は5年間となっており、5年ごとの更新が必要であり、更新の際には所定の更新料が発生します。
また、キッチンカーの営業許可は1台ずつ必要です。
そのため複数のキッチンカーを運営する場合には、キッチンカーの台数分許可が必要となります。
2021年5月末まで、キッチンカーの営業許可は、販売するメニューによって「飲食店営業」「菓子製造業」「喫茶店営業」に分かれていました。
しかし、2021年6月1日から、販売メニューに関係なくキッチンカーの営業許可は、「飲食店営業」の営業許可へ統一されました。
キッチンカーはメニューが肝心!メニュー決めのコツ

キッチンカーは、メニューが肝心です。
ここではメニュー決めのコツをご紹介します。
メニューの種類は大きく2つ
キッチンカーのメニューは大きく分けて「ランチ系メニュー」と「軽食系メニュー」の2種類あります。
この2つはキッチンカーのメニューに適しており、ほとんどの出店者が提供しています。
ランチ系メニュー
その名の通り、お昼時にオフィス街にいる会社員や、公園にいるファミリー層向けにカレーや丼物、お弁当などの主食メニューを提供しているのが「ランチ系メニュー」です。
特に、都心部などのオフィス街はお昼時になると周辺の飲食店は混み合いやすく、ランチ難民が多くなります。
「お店に並びたくないからキッチンカーを使おう」という人も多いため需要があります。
しかし、ランチタイムの11:00~14:00がピークとなり、それ以外の需要は見込めないため短時間で収益を上げる必要があります。
軽食系メニュー
キッチンカーには、カフェ的な位置付けの「軽食系メニュー」も多く売られています。
クレープやワッフルなどのスイーツ、ドリンクを扱ったカフェメニューのキッチンカーが人気です。
他にもからあげ、ケバブ、ハンバーガーなど、手軽にサクッと食べられるものが該当します。
軽食系メニューは、ランチメニューのようにピーク時間がなく、イベントでの集客も期待できます。
メニューを決めるコツ
キッチンカーは通常の店舗型と違い、スペースや機材が限られるため提供できるメニューも違ってきます。
また、テイクアウトという性質上、店舗型とはニーズも違うため、以下のポイントをおさえる必要があります。
①お店の看板となるメニューを1つ決める
キッチンカーを成功させるにはお店の目玉となる看板メニューが必要不可欠です。
看板メニューとは「ここでしか食べられないメニュー」のことです。
例えば、「このお店のこのハンバーガーが食べたい」と思わせられるようなメニューを1つ決めると良いでしょう。
その為には看板メニューを決めたら、競合となるお店を食べ歩き、調査とオリジナルのメニューを研究していくことで、ここでしか食べることができない唯一無二のメニューというものができ、結果的にキッチンカーの成功に繋がるでしょう。
②場所や時間などニーズに合わせる
キッチンカーの最大のメリットは、ニーズのある所に移動して営業できる点です。
出店の場所や時間によって客層などは異なるため、その場や時間に集客が見込めるお客様のニーズに合わせたメニューを考えると良いでしょう。
例えば、イベントであれば歩きながら手軽に食べられる軽食系メニューを揃えたり、ドリンクを買うためだけに別のお店へ並び直すのは大変なのでドリンクもあわせて販売したりする、などです。
③提供スピードの早いメニュー
キッチンカーという特性上、提供スピードを求められることが多いでしょう。
特にランチタイムを狙った営業であればなおの事です。
そのため、キッチンカーでは提供スピードの早さを考慮する必要があります。
提供スピードが早ければ必ず成功するというわけではありませんが、調理工程が簡単で提供スピードが早いメニュ―は、回転率が高く、利益アップが見込めます。
④定番で人気のメニュー
メニュー決めに迷ったら「定番で人気のメニュー」を選ぶとよいでしょう。
珍しいメニューはお客様の目に止まりやすいというメリットはありますが、あまりにも馴染みのないメニューだと「どんな味がするのかわからない」といった印象を与えてしまうため、要注意です。
お客様の目線で考えて、あまりにもイメージしにくい商品は置かない方が良いでしょう。
どうしても珍しいメニューを置きたいという場合は、お試しサイズを用意する、試食を用意するなど工夫をするとよいでしょう。
キッチンカーのおすすめメニュー5選

前項ではメニュー決めのコツをご紹介しましたが、具体的にどんなメニューがキッチンカーに向いているでしょう。
ここではキッチンカー向けの人気メニューをご紹介します。
①から揚げ
キッチンカーでの出店におすすめのメニューの1つは、高い人気を誇るから揚げです。
から揚げは、子どもから大人まで幅広い層に人気があり、需要が期待できます。
また、から揚げは、食べ歩きがしやすく、特にイベントや商業施設での出店において重宝されます。
メニューによっては限られた時間帯しか売れないものもある中で、から揚げは単品売りすることで時間帯に限らず需要があるためメリットが大きいでしょう。
客単価と原価率の観点から見ると、からあげは比較的高い利益率を実現しやすいメニューです。
客単価は500円から700円程です。
しかし、から揚げのデメリットは、競合が多いことです。
キッチンカー以外にも、コンビニやスーパー、から揚げ専門店など、どう差別化を図るかが成功するためのポイントでとなるでしょう。
②クレープ
クレープは、カスタマイズ性の高さとフレーバーの豊富さで、スイーツ系で圧倒的人気を誇ります。
平日・土日関係なく需要が見込める上に、スイーツ系だけでなく、食事系のクレープも用意することでランチタイムなど幅広い時間帯での需要も見込めます。
また、キッチンカーでクレープを提供することの大きな利点は、調理の簡単さと、顧客の待ち時間を最小限に抑えられることです。
クレープは特にイベントや観光地での出店に最適です。
客単価は300円から700円程です。
③ハンバーガー
キッチンカーで人気のメニューといえば、ハンバーガーも挙げられますです。
ハンバーガーの特徴はその多様性とカスタマイズ性にあり、様々な具材やソースの組み合わせが可能です。
顧客一人ひとりの好みに合わせたオーダーメイドのハンバーガーを提供できれば、さらに人気が高まるでしょう。
ただし、作り置きが難しく、スピーディに提供するには効率よく調理する必要があるため、キッチンカーとしての難易度は高いでしょう。
客単価の目安は800円程度ですが、ボリューム満点だったり、リッチなハンバーガーにすることで高単価でも販売しやすいメニューです。
また、ハンバーガーと一緒にポテトやドリンクをセットで購入する人が多いはずなので、客単価のアップも見込めるでしょう。
④カレー
カレーは、キッチンカーのランチメニューの中でも特に人気が高いメニューです。
国民食ともいえるカレーは根強い人気を誇るため、安定した集客が見込めます。
また、カレーはバリエーションの豊かさもポイントです。
家庭でよく食べられている欧風カレーのほかに、スパイスカレーやスープカレーなど、様々なメニューがあります。
カレーは「作り置きができる」「よそって提供するだけ」などオペレーションが簡単なのことも、キッチンカーで取り扱いやすいメニューです。
ただ、スパイスや調理方法にこだわると手間と時間がかかるため、しっかりとした下準備が必要となるでしょう。
カレーの客単価は800円前後です。
チーズやフライ、野菜など追加トッピングを用意することで、カスタマイズ性やオリジナリティを出すこともでき、単価を上げることも可能です。
デメリットは、出店場所が平日のランチタイムに限られやすいことです。
それ以外では、カレーフェスといった限定的なイベントになってしまう点に気をつける必要があります。
⑤ケバブ
ケバブは、スパイスで味付けされた肉を長い串に刺し、垂直に立てて回転させながら焼きあげるトルコの料理です。
手軽に片手で食べられるためイベントで人気のメニューです。
また、ケバブは調理の手軽さがおすすめの理由でもあります。
一度準備してしまえば、注文に応じて肉をスライスして提供するだけなので、迅速な対応が可能です。
ケバブのもう一つの強みは、バリエーションの豊富さです。
ラム、ビーフ、チキンなどさまざまな肉を使用できるため、様々なお客様の好みに合わせられます。
複数のソースを用意してカスタマイズ性を上げることも可能です。
客単価は500円から700円程です。
まとめ
今回は副業でキッチンカーを開業ために必要な開業の手順からメニュー決めのコツまでをご紹介しました。
- 副業でのキッチンカー開業は増えてきている
- 食品衛生責任者の取得や、営業許可申請が必要
- キッチンカーはメニュー決めが肝!