冬の別荘の憧れと言えば「薪ストーブ」
ゆらゆらと揺れる火を見ていると、日常の喧騒も忘れてしまいそうです。
別荘に薪ストーブを設置すれば、日常を離れ、豊かな自然の中で過ごす時間が、さらに贅沢なものになるでしょう。
しかし、薪ストーブの導入には、種類やサイズ、費用など、様々な要素を考慮する必要があります。
今回は薪ストーブを導入検討している方に、選び方から費用、メンテナンス方法までをご紹介します。
薪ストーブの魅力

薪ストーブの魅力は、単なる暖房手段というだけでなく、豊かなライフスタイルを提案します。
パチパチと音を立てて燃える炎は、心身に安らぎを与えてくれます。
また、薪ストーブの温もりは、エアコンとは異なり、部屋全体をムラなくじんわりと暖めてくれます。
薪ストーブのメリット
①高い暖房効率
薪ストーブは、一度熱せられたストーブ本体が長時間熱を放射するため、エアコンよりも少ないエネルギーで部屋を暖めることができます。
②リラックス効果
炎のゆらめきとパチパチという音は、心身に癒しを与え、リラックス効果が期待できます。
③インテリアとして
薪ストーブは、部屋の雰囲気を格段にアップさせ、おしゃれな空間を演出します。
薪ストーブの選び方

薪ストーブには形状や材質、暖房方式など様々な種類があります。
どのように選べば良いか下記の観点で検討すると良いでしょう。
①使用環境
小さいお子さん・ペットがいる場合は薪ストーブ本体があまり熱くならないタイプがおすすめです。(詳細は後述の暖房方式で説明)
また、料理がしたい場合には輻射式がおすすめです。
昨今は料理がしやすい天板タイプの薪ストーブも多く出ています。
料理もしたいけど、お子さんがいるという場合にはフェンスを設置するなど、安全対策をすると良いでしょう。
②暖められる面積
薪ストーブのカタログを見ると、暖められる面積の最大値は小型モデルで約100㎡、中型モデルは150㎡とされていることが多いです。
しかし、気密性の高い住宅であれば十分であっても、ログハウスのような別荘や築年数の古い木造住宅の場合は、その数値よりも暖房効率は下がると言えます。
使いたい空間の面積がどのくらいかによって選ぶことはもちろんですが、十分に暖房効果が得られない場合には、ホットカーペットなどサブの暖房器具も検討しましょう。
③デザイン
デザインには、薪ストーブと言って思い浮かべるデザインの「クラシックタイプ」、インテリアに馴染む直線的な「モダンタイプ」の大きく2つに分かれています。
しかし、デザインについてはかなり幅がありますので、ご自身が納得のいくデザインを探しましょう。
④暖房方式
暖房方式には大きくわけて3種類あります。
暖房効率や使用環境に合わせて選ぶと良いでしょう。
輻射式
燃焼熱でストーブ本体を蓄熱し、そこから発する熱で周辺の空気を温める薪ストーブ定番のタイプです。
ストーブの全方向から放熱するので、室内全体を温める事が出来ます。
遠赤外線効果で人や壁や床を温めるため、身体も芯から温まる事を実感できます。対流式よりも薪ストーブ本体が温まるのが早く、天板に鍋を置いて料理ができます。
ただし、本体表面が高温になるため、小さなお子様やペットがいるご家庭では、安全の為にフェンスを設置するなどの火傷への注意と対策が必要となります。
対流式
薪ストーブの火室(炉内)と側面に空間を作り、その空間に室内空気が通ることで、暖められた空気が対流を起こし部屋全体へ広がっていく方式です。
これはエアコンやファンヒーターと同じ暖房方式になります。
輻射式よりも部屋全体を暖めるのに適していますが、天板はそれほど高温にならないため、料理をするのは向いていません。
一方で高温になりにくいため、壁や家具に近づけられるメリットもあります。
開放式
燃焼部分にガラスも扉もついていなく、暖炉のように直接燃焼している薪が見えるのが開放式です。
薪の燃える様子や音が聞こえる点は魅力的ですが、暖房効率は輻射式、対流式よりも劣ります。
薪ストーブの素材
鋳物
鋳物は型の中に溶かした金属を流し固めて成型します。
ストーブ本体が温まるのに時間がかかりますが、蓄熱性能に優れ、冷めにくい特徴があります。
デザイン面では型に流し込んで作られるため、凝ったデザインの薪ストーブを作ることができます。
また、輻射熱による遠赤外線効果も高いため、より身体の芯まで温まる事を実感できます。
ただし、急激な温度上昇により割れてしまうことがあるので温度管理には注意が必要です。
鋼板
鋼板は一枚板の鉄板を加工して成型します。
熱の伝わりが早く本体が温まりやすい特長があります。
本体が温まりやすいので着火から安定燃焼までが早く、「立ち上がりが早い」と言われています。
一方で火が消えると冷めやすいと感じることもあります。
価格は鋳物よりも若干安価な為、コストやデザイン性を重視する方にはお勧めします。
ステンレス
主にアウトドア用として使用されるステンレス製の薪ストーブは、軽くてサビに強い特長があります。
しかし、鋳物や鋼板製の薪ストーブに比べると蓄熱性や耐久性が劣るデメリットもあります。
薪ストーブにかかる費用

憧れの薪ストーブがある暮らしにわくわくしますが、費用も気になるところです。
ここでは設置費用、維持費についてまとめます。
設置費用
設置には薪ストーブ本体の他、炉台、煙突が必要となります。
また業者に設置してもらう場合には工事費がかかってきます。
建物に合わせた煙突の計画や設置場所のデザインなどで材料価格が違ってきますが、薪ストーブの設置費用の合計金額は100万円〜160万円は必要とみておくとよいでしょう。
凡その費用
薪ストーブ本体価格 | 約20万円〜100万円 |
---|---|
材料価格(煙突部材等) | 約45万円〜65万円 |
設置工事費 | 約20万円〜55万円 |
維持費
◎メンテナンス費用
薪ストーブを長く、安全に使うためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
周辺の掃除や灰の片付けなど、日常的なお手入れにはじまり、オフシーズンの煙突掃除や本体の点検など、本格的なフルメンテナンスが必要です。
業者に依頼する場合、薪ストーブ本体だけの清掃は約2~3万円、煙突掃除は2~4万円、フルメンテナスで5万円前後が相場となっています。
煙突の形状が特殊な場合や、業者が遠方のケースなどは、別途料金が発生することもあります。
◎薪の費用
薪ストーブの薪代は、広葉樹を使用する場合で1束500〜1,000円です。
1束で約3~4時間燃焼できるため、1日2~3束が必要となるでしょう。
針葉樹は燃焼時間が半分のため、必要数も多くなります。
ホームセンター、薪専門店の方が薪代を抑えやすいため、できるだけ安く薪を確保できる場所が近くにないか探してみましょう。
薪ストーブ設置で気をつけること

薪ストーブを購入して、いざ設置!その前に気をつけたいことをご紹介します。
①火災に注意が必要
当然のことではありますが、火を使う薪ストーブで一番気をつけたいのが火災です。
薪ストーブは扉を閉めている場合、炎が直接外に出ていないため、一見安全に見えます。
しかし、輻射式の場合、本体が非常に高温となることが火災の原因となる場合があります。
薪ストーブから放射される遠赤外線は空気を素通りし、遠赤外線が当たった物体の表面を直接温めます。
距離が離れるほど遠赤外線は減衰するため、十分な距離を保っていれば問題ありませんが、危険なのは距離が近い場合です。
薪ストーブはキッチンのコンロなどと同じように、室内に設置する場合は天井や周囲に不燃性の建材を使うよう建築基準法で定められています。
炎が中に閉じ込められているため、つい薪ストーブの裏や横のスペースに薪などを置いてしまいがちですが、気が付かないうちに薪などに火が付いてしまうこともあるため要注意です。
そして、意外と多く聞かれるのが煙突火災です。
煙突は薪ストーブや暖炉などの素材と同じく、不燃材料の鋼板で作られています。
問題となるのは、薪を燃焼させたときに出る不純物です。
ガスなどと異なり、木材は燃焼した際にタールや煤などを大量に吐き出します。
燃焼後、高温になった空気と共にタールなどが巻き上げられ、煙突を通り抜けます。
その後排気口では、それらの不純物が急激に冷却され、内側に付着・蓄積していきます。
そのため煙突が詰まっていき、排気が十分にされなくなると、煙突内部が高温になって煙突と接触する壁や天井部分が熱され、火災となってしまうことがあります。
薪ストーブの中には二次燃焼機能がついているものもありますが、これらの排出量はゼロにはなりません。
その為、煙突清掃は定期的に行いましょう。
また、使用する時は排気口が落ち葉などで塞がっていないかも確認しましょう。
②メンテナンスをしっかりする
長く使う為にメンテナンスが必要なことはもちろん、煙突火災を防ぐにもメンテナンスは重要です。
煙突の掃除は自身でもやることも可能ですが、屋根に上る必要があること、煙突掃除中に舞い上がる煤などは有害物質であることから、業者に依頼するのが安全でしょう。
特に、慣れない方がご自身で掃除をすると、本来掃除をしなければいけない部分を見逃し続け、数年後に空気の通り道がふさがれて火災が発生してしまうケースもあります。
一般的には年に一回の清掃が基準となりますが、薪ストーブの使用頻度が極めて少ない場合や逆に多い場合などは、業者の方と相談し、清掃頻度の確認をオススメします。
③薪置き場も確保する
半日程度、薪ストーブを使い続けると、10kg以上の薪が必要になります。
それを数日分、数ヶ月分保管するにはそれなりにスペースが必要です。
薪は、風通しが良く雨に当たらない場所に保管しなくてはいけないため、ガレージ内や軒下のスペースに置いたり、専用の薪小屋などを作ったりするのがおすすめです。
一般的には、薪一束のサイズは直径22.5cm・長さ36cm~45cm程度なので、近所で手軽に薪が買えない場合には、それを冬の期間分保管する必要があります。
薪ストーブを設置する際は、薪を置くスペースも合わせて考えましょう。
薪ストーブのメンテナンス方法

薪ストーブはシーズン中とシーズンオフでメンテナンスが必要です。
具体的にどのようなメンテナンスが必要かをご紹介します。
【自分で出来る】シーズン中のメンテナンス
①扉とガラスの掃除
扉回りの掃除では、扉の密閉性を保つために灰や燃えカスを取り除きます。
ガラス掃除を忘れてしまうと灰がガラス化して曇ってしまうので、その場合は専用スプレーを使うと灰が取れやすくなります。
ドアガラスが毎日、煤で黒くなる場合は不完全燃焼の可能性もあるので、燃焼状態を確認しましょう。
②炉内の灰の掃除
灰受けに溜まった灰は、専用のコンテナに入れて完全に火の粉が消えるまで保管しておきます。
炉内の灰は、熾火を長時間保つために、火床(ひどこ)として薄く溜めておく事と良いでしょう。
【業者推奨】シーズンオフのメンテナンス
①本体の点検
本体を点検して、必要な部分の補修・交換をします。
特にバイメタルが正常に動くか、ガラス扉のガスケットが劣化してないかを確認します。
また、煤などを取り除き、錆防止クリームなどで本体を磨きます。
②炉の中の掃除
灰を炉内に残したままにしておくと湿気を止め錆の原因を作るので、炉内にたまってるススや灰を取り除きます。
③煙突の掃除
煙道火災を予防するために煙突内部の掃除します。
煙突掃除では、掃除用ブラシを煙突の上から差し込んで付着しているタールや煤を落とします。
シーズンオフのメンテナンスは自分で行っているという方もいますが、慣れないうちは専門業者に依頼すると良いでしょう。
薪ストーブの販売店でメンテナンスを請け負っているところもあるため、確認してみましょう。
まとめ
今回は薪ストーブを導入検討している方に、選び方から費用、メンテナンス方法までをご紹介しました。
- 薪ストーブは使用環境によって暖房方式・デザインを選ぶ
- 火災リスクや薪を置くスペースも考える
- 煙突清掃などのフルメンテナンスは業者がおすすめ