都市部で暮らしていると、農業に興味があるにもかかわらず農家になるのは難しいと感じている人々は多いかと思います。
それでは、副業で農家をすることは可能でしょうか?
農業は兼業で行っている個人も多く、副業は可能と言えるでしょう。
そして、副業での農家なら自分の手で育てた野菜が食卓に並ぶ嬉しさの他、収入アップにも繋がります。
今回は、副業で農家を始めたい人に向けて、兼業農家のメリット・デメリットと気になる収入はを解説します。
副業での農家は『兼業農家』

兼業農家とはその名の通り、農業と農業以外の仕事を兼任している農家のことを指します。
また、兼業農家は「第一種兼業農家」と「第二種兼業農家」の2つに分類されます。
第一種兼業農家
第一種兼業農家は、農業からの収入が兼業からの収入より多い農家のことを指します。
農業からの収入がメインで、農業以外の副業収入を得ているとこれに当てはまります。
第二種兼業農家
第二種兼業農家は、兼業からの収入が農業からの収入より多い農家です。
普段はサラリーマンや自営業などの本業からメインの収入を得ていて、副業収入という形で農業収入を得ているとこれに当てはまります。
新型コロナをきっかけにリモートワークが広がり、副業として農業を行う第二種兼業農家が増えました。
また、農業に関する情報にもアクセスしやすくなり、農業を始めるハードルが以前よりも低くなっています。
兼業農家のメリット

ここでは兼業農家として農業を行うメリットをご紹介します。
副業収入を得られる
兼業農家は、本業以外からも収入を得られることがメリットです。
専業農家を目指す場合でも、まずは副業としてノウハウを身につけ、売上をもとに徐々に規模を拡大すると良いでしょう。
特に農業は初期投資が大きく、最初から専業農家として生計を立てるにはリスクを伴います。
自分のペースに合わせられる
兼業農家は、本業からの収入もあるため、自分のペースに合わせて農業を始められます。
そのため、最初は週末だけといったスタイルもおすすめです。
本業からの収入が安定しているため、精神的な余裕があるからこそ、こだわりをもって試行錯誤を重ねられます。
食費を抑えることができる
兼業農家になると、自分で作った新鮮な作物を食べられるため食費を抑えらるというメリットがあります。
うまくいけば自分の作った野菜だけで食べていくといった自足自給に近い生活もできるため、副業として収入を得るだけでなく、生活費の節約にもつながります。
将来、専業農家として大きくすることができる
副業での農業は、将来的に大きくできる可能性があります。
一度売上が伸び始めると、そこで得た資金を元にさらなる投資が可能になります。
投資を元に作物の質や量を高めていくことで、さらなる収入が見込めるでしょう。
副業で農業を始めて成功し、専業農家として転身した方も多くいます。
兼業農家のデメリット

兼業農家にはメリットもたくさんありますが、反対にデメリットも存在します。
ここでは兼業農家として農業を行うときのデメリットをご紹介します。
初期投資が高額
農家としてスタートした初期段階では、多くの場合コストが収入より大きくなります。
農地のレンタル代や農機具の費用などにより、高額の初期費用が発生するためです。
トラクターやコンバイン等は1台100万円以上かかるため、副業という立ち位置において、資金の捻出が難しい部分ではあります。
また、3平米の土地を利用する場合、年間8万円程度必要といわれています。 作物が育つまでに一定の時間を要するため、短期的には収入よりコストが上回ります。
そのため副業で農業を始める際は、計画的に始めることが大切です。
短期的な収益が見込めない
農業は上記のように初期投資が高額なことに加え、作物が育つまで一定の時間がかかります。
そのため、すぐに収益化することが難しいビジネスだと言われています。
しかし、作物の育成期間は物によって大きく違うため、育成期間が短い物や二期作が可能な作物を選ぶことで、なるべく早く収益を得る方法もあります。
一定の時間・労力が必要
農業を続けるためには、一定の時間や労力が求められます。
例えば、農業では種まきや収穫、生育状況の定期的な確認が必要となってきます。
副業で農家をする場合、本業の空き時間や週末にも作業をしなければなりません。
本業の忙しさや、自分の体力を加味して始めないと、中途半端に終わってしまう可能性があります。
そのため、体力に余裕があり、本業も忙しくない方に適していると言えるでしょう。
兼業農家の収入は?

兼業農家の気になる年収はいくらでしょうか。
なお、農林水産省では、兼業農家という区分を2020年に廃止し、本業を持ちつつ農業を副業にしている農家を以下ように分けています。
- 準主業経営体:農業以外の収入が主であり、自営農業に60日以上従事している世帯員(65歳未満)がいる個人経営体
- 副業的経営体:自営農業に60日以上従事している世帯員(65歳未満)がいない個人経営体
まずは専業農家の収入
農業所得が主(所得の50%以上が農業所得)である「主業経営体」(ここでは専業農家とします)の収入は、農林水産省「令和5年 農業経営体の経営収支」によると、平均的な年収は404.2万円でした。
兼業農家の収入は?
副業として農業を行う人々の平均的な年収は51.1万円と報告されています。
準主業経営体の農業所得で見ると平均約60万円、副業的経営体の農業所得は平均約23万円という結果となっています。
こうして金額を見てみると、副業・兼業としての農家は効率的とは言えないかもしれません。
しかし将来、専業農家を目指している人にとっては、技術を身に付けながら収入アップを図れるので非常に魅力的です。
副業農家の始め方

農業を始めるには、まず農地が必要となります。
ここでは農地について解説します。
自分の農地で始める
もし親から相続した農地があれば、いつでも農業を始められます。
農業機械や施設、販売ルートなども引き継ぐのであれば、なお始めやすいでしょう。
しかし、放置された農地だけを受け継いだのであれば、農業機械や施設、販売ルートなどあらゆる準備が必要で、農地を耕す必要もあります。
また、農業はさまざまな技術や知識が必要です。
可能であれば親や知人から、農業の技術や知識を教えてもらうと良いでしょう。
農業の知識や技術を教わる人がいない方や事業として本格的に農業を行う方は、国や自治体などが実施している補助金制度や研修を利用するのも一つの方法です。
市民農園や貸し農園で始める
手軽に副業で農業を始めたい方は、市民農園や貸し農園を利用すると良いでしょう。
市民農園とは、都市の住民が小面積の農地を借りて農作物を育てる農園のことです。
この契約した農地で収穫された農作物は、自家消費量を超える分のみ販売が可能です。
ただし、農具などは自分で用意する必要があります。
市民農園はレクリエーションや健康のために利用するものであり、営利目的で利用する農地ではないため基本的に自家消費のために利用しましょう。
貸し農園は手ぶらで通える農地のレンタルサービスで、必要な農具や資材、種・苗など農業に必要なものすべてが料金のなかに含まれています。
営利目的のサービスではないため、農業で収益を上げるというより自家消費用の農作物を得ることと、農業の技術や知識を学ぶために利用すると良いでしょう。
地主から農地を借りる
副業で農業を始めるために地主から農地を借りる方法があります。
しかし、個人が農地を借りて農業を始めるには、一定の要件をクリアして農業委員会から許可を得る必要があります。
農地を借りるために必要な要件の一例は次の通りです。
- 機械や労働力などを効率的に利用する営農計画を持っている
- 農地取得者が年間150日以上農作業に従事する
- 農地面積の合計が原則50a以上である(令和5年4月から農地法の下限面積要件が緩和されます)
- 水利調整や農薬などで地域に迷惑をかけない
週末農家などの副業レベルでは、農地を借りる条件をクリアするのは難しいです。
地主から農地を借りて農業を行う場合は、事業として本格的に農業を始めたい方が向いているでしょう。
作った作物を販売するには

兼業農家を始める際、販売ルートを確保することも重要です。
ここでは、主な販売ルートについて解説します。
オンラインショップ
今は農作物の販売を取り扱っているオンラインショップが多数あります。
オンラインショップでの販売は、SNSやブログで集客し、自由に価格設定できることがメリットです。
一方、他の出品者との差別化が必要で、売るためのノウハウや工夫が必要となります。
道の駅などの直売所
道の駅等にある直売所での直接販売も1つの販売ルートです。
自由に価格設定できることや、少量からでも販売可能なため、副業の農家にもおすすめです。
しかし、直売所によって利用料が必要な場合があり、赤字が発生する場合もあります。
農業協同組合(JA)
農業協同組合に作物を販売するメリットは、安定した売り上げが期待できる点です。
また、営農指導が受けられる、JAバンクで金利が優遇される、生産者同士のつながりができるといったメリットもあります。
ただし、使用する農薬が指定されていたり、作物の形や大きさの規格が厳しく、買い取り価格が固定されていることがデメリットと言えます。
副業で農家を始める際のポイント

兼業農家を始める場合、いくつかの注意点があります。
ここでは、特に重要なポイントをピックアップして解説します。
補助金を活用する
費用面での不安を抱える人には、補助金を活用することをおすすめします。
兼業農家を始める人が利用できる、主な補助金は以下の通りです。
就農準備資金・経営開始資金
次世代を担う農業者となることを志向する49歳以下の者に対し、就農準備段階や経営開始時の早期の経営確立を支援する資金の交付となっています。
農業開始後に経営開始資金として、年間150万円が最長3年間給付されます。
また、農業開始前に就農準備資金として、年間150万円が最大2年間給付されます。
どちらも就農予定時に49歳以下であること、その他交付条件があるため、詳細は以下で確認してください。
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)
農業経営改善に必要な資金を、借入期間に応じて長期かつ低利で、最大3億円まで融資してくれる制度です。
対象は認定農業者となっていますが、認定は兼業農家も可能で、経営規模の大小も問わないとされています。
認定農業者の申請は各自治体へ行うため、詳しくは農業を始める予定の自治体で確認しましょう。
費用対効果をふまえて計画をたてる
副業で農家を始める際には、費用対効果を考慮した計画作りが重要です。
初期投資が大きいため、無計画に始めると赤字に陥るリスクがあります。
栽培する作物や栽培方法、農地の広さなど、自身の能力に合わせた規模で計画を立て、費用対効果を見極めることが大切です。
また、販路によって単価が異なるため、販路をどうするかといった戦略も重要となってきます。
確定申告の対応も忘れずに
兼業農家を始める際、確定申告の対応も念頭に起きましょう。
副業の場合、年間で20万円以上の副業所得があると確定申告が必要です。
農業をする上で使った費用の領収書や請求書を保管し、収支を記録しておきましょう。
まとめ
今回は、副業で農家を始めたい人に向けて、兼業農家のメリット・デメリットと気になる収入はを解説しました。
- 兼業農家のメリットは、自分で育てた野菜を食べられる、将来ビジネスを大きくできる可能性がある
- 兼業農家のデメリットは、初期投資が高い、収益化まで時間がかかる
- 農地の取得、販路の確保など計画を立てて取り組もう