近年、リモートワークやワーケーションといった柔軟な働き方が普及しつつあり、都市と地方を行き来する「二拠点生活」というスタイルが注目されています。
しかし、地方にもう一つ家を持つというと、費用や手間の面でハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。 そんなとき、見直したいのが「実家」の存在です。
今回は、実家を活用した二拠点生活について、メリットや注意点、成功させるためのポイントをご紹介します。
二拠点生活とは

二拠点生活とは、都会と田舎など、2つの拠点または複数の拠点を行き来するライフスタイルを指します。
二拠点生活が注目されるようになった背景には、コロナ禍以降リモートワークが普及したことで、パソコンとインターネットがあればどこでも仕事ができる人が増えたことによります。
そのため、必ずしも職場の近い都会に住まなくても良いという風潮が広まりました。
しかし、都会は交通利便性や公共サービスの充実などメリットも多く、仕事もフルリモートワークで行っている人は少なく、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリット型の勤務形態が大半となっています。
移住とは異なり、仕事や住まいを変える必要がないところが二拠点生活の最大のメリットと言えるでしょう。
国や地方自治体も二拠点生活を推進
国や地方自治体も二拠点生活を推進しており、2024年11月に二拠点生活の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「改正広域的地域活性化基盤整備法」が施行しました。
概要としては、「都道府県・市町村の連携」「官民の連携」「関係者の連携」を軸に、市町村単位でき家の改修、シェアハウスやテレワーク用の共同オフィスの立ち上げなどの環境整備を行うことや、計画自体を官民連携で作る協議会制度も創設するとしています。
これにより、市町村が促進計画を作成すれば、二拠点生活者の住まいや職場環境を整える際に国の支援が受けやすくなり、二拠点生活者にもメリットが増えるということになります。
二拠点生活に「実家」という選択肢

二拠点生活がしやすい環境や施策が整ってきたとは言え、費用や手間の面でハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。
特に住宅に関わる費用は生活に占める割合が大きいため、なかなか踏み出せないと言う人も多いでしょう。
そんなとき、二拠点先の選択肢の一つとして「実家」を活用するという方法があります。
使われていない、あるいは家族は住んでいるが部分的に空いている実家を“第二の拠点”として活用することで、二拠点生活はグッと現実的な選択肢になります。
また、空き家になっている実家の管理・維持という観点でも、定期的に訪れることで資産の劣化を防ぎ、地域コミュニティとの接点を保つことにもつながります。
実家二拠点生活のメリット

実家で二拠点生活をする際のメリットを見ていきましょう。
メリット1 費用を抑えられる
実家はすでに所有している、もしくは家族が管理している物件であるため、新たに不動産を取得する必要がありません。
固定資産税や光熱費などの基本的な維持コストのみで始められるため、経済的な負担を最小限に抑えることができます。
メリット2 精神的な安定が得られる
都会の喧騒を離れ、自然に囲まれた静かな環境で過ごす時間は、心身のリフレッシュに最適です。
定期的に環境を切り替えることで、仕事への集中力が高まったり、創造力が刺激されたりといった副次的な効果も期待できます。
また、自身が子供の頃に育った慣れ親しんだ環境の場合、より精神的にリラックスできるでしょう。
メリット3 親の見守りを兼ねられる
親が現在住んでいる場合、定期的に帰ることで、顔を見て様子を確認できるため、遠距離介護の一歩手前の段階から関わることができます。
親にとっても子どもの訪問は安心材料となり、精神的な支えにもなります。
メリット4 副業や趣味の拠点として活用できる
都市部では難しいようなスペースを要する趣味(ガーデニング、DIYなど)や、小規模な副業(民泊、農業体験など)を実家で展開するケースもあります。
空いた部屋や土地を有効活用することで、新しい収入源につながる可能性もあります。
実家二拠点生活の注意点

実家で二拠点生活は費用面や親との交流など、メリットも多くありますが、注意も必要です。
注意点1 実家に住む家族の生活を優先
実家に親や兄弟姉妹が住んでいる場合、自分の滞在が相手の生活リズムに影響を与えないよう配慮が必要です。
あくまでも「実家=実家にいる家族が生活の主体」です。
トラブルの原因とならないよう、自分たちの生活サイクルを前提にしないよう心掛けたいところです。
キッチンや風呂、共有スペースの使い方や滞在の頻度については、事前にすり合わせをしておくことでトラブルを防げます。
注意点2 住宅の老朽化対策
長期間使用していない実家の場合、屋根や水回りの劣化、カビやシロアリなどの問題が発生している可能性があります。
簡易的な修繕では対応しきれないケースもあり、事前に専門家の診断を受けることをおすすめします。
注意点3 地域との関係性づくりがカギ
長年離れていた場合、地域の風習やご近所付き合いの感覚にギャップを感じることもあります。
短期間の滞在でも挨拶や交流を意識し、少しずつ信頼関係を築く姿勢が重要です。
自治会や地元の行事への参加も効果的です。
注意点4 交通手段と時間の確保
都市から実家までの移動が負担になる場合、頻度が減ってしまい、「二拠点生活が続かなかった」ということもあります。
公共交通機関の本数や運行時間、最寄り駅からのアクセス方法なども含めて、事前に綿密な計画を立てることが必要です。
実家活用の具体的なステップ

二拠点生活を始めるにあたっては、次のようなステップを踏むとスムーズです。
STEP1 実家の現状を確認
まずは実家が現在どのような状態かを確認しましょう。
居住可能かどうか、水道・ガス・電気などのインフラが使えるか、老朽化している部分がないかなどをチェックします。
長年空き家だった場合は、建物の構造や設備更新が必要かなど、専門家の点検を受けるのも有効です。
STEP2 家族との相談
実家を活用するには、親や兄弟姉妹など家族の合意が不可欠です。
滞在の頻度や部屋の使い方、生活スペースの共有の有無などを事前に話し合いましょう。
相続や所有権に関わる課題がある場合は、早めに整理しておくことも重要です。
また、自身の家族とも相談が必要です。
例えば週末のみの滞在であっても、「お互い気を遣ってリフレッシュできなかった」、「子育てについて意見が合わずトラブルになった」ということがないようお互いの家族とよく話し合いましょう。
STEP3 必要な整備
実際に生活するとなると、快適性や安全性を考慮して最低限の修繕や設備更新が必要になることがあります。
たとえば、水回りの改修、インターネット環境の整備、断熱対策などです。
リモートワークを想定する場合は、安定したWi-Fi回線やモバイル通信環境の確保が必要です。
実家での二拠点生活を成功させるコツ

ここまで実家で二拠点生活をするメリットと注意点を紹介しました。
ここでは、実際に生活を始めたあとに意識したいポイントをご紹介します。
無理のない頻度・期間からスタート
最初から「毎週通う」「月の半分を実家で過ごす」といったハードルの高い目標を設定すると、移動負担や生活リズムの乱れから挫折してしまう可能性があります。
特に実家に家族が住んでいる場合は、最初はお互い張り切ってしまい生活リズムを崩してしまうことも多いでしょう。 まずは月に1回の週末滞在や、長期休暇の一部を使った“お試し滞在”など、負担の少ない頻度・期間から始めるのが現実的です。
実家での生活に慣れ、居心地の良さやメリットを感じられるようになったら、少しずつ滞在時間を増やしていくとよいでしょう。
都市部と田舎の“いいとこ取り”を意識する
二拠点生活の大きな魅力は、都市と田舎それぞれの良さのいいとこどりにあります。
都市部では仕事や最新のサービス、利便性を活かしながら、田舎では自然とのふれあいや静かな時間を通じて心身を整える。
生活スタイルや気分に応じて、どちらの拠点も“自分らしく生きる場”として使い分けることが可能です。
たとえば「集中して働きたい週は都会」「リフレッシュしたい週末は実家」といった切り替えのある暮らしが理想です。
「どちらも100%」ではなく、「使い分ける」感覚で
二拠点生活を始めたばかりの方が陥りがちなのが、「どちらの拠点にも完璧さを求める」ことです。
しかし現実的には、どちらか一方だけで全てを満たすのは難しく、二つの生活スタイルにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
大切なのは、「どちらかに完全に依存しない」こと。
都市では仕事やネットワークを維持し、実家では癒しや家族との時間を確保する、生活の目的や場面ごとに拠点を使い分ける意識を持つことで、ストレスなくバランスの取れた暮らしが実現できます。
まとめ
今回は、実家を活用した二拠点生活について、メリットや注意点、成功させるためのポイントをご紹介しました。
- 実家を活用することで、低コストで二拠点生活を始められる
- 親との関係や地域とのつながりを再構築できる
- 生活サイクルは、実家に住んでいる家族を優先することでトラブル回避