国や自治体は少子高齢化に伴い、地方で問題となっている過疎化や人材不足に対し、移住せずにその地域と密接に関わる「関係人口」を増やす取り組みを積極的に始めています。
そこで注目されているのが「地方副業」という働き方です。
特に人手不足が進む地方においては、能力も、経験や知見も豊富な都市部の人材を活用できる取り組みとして、大きな期待が寄せられています。
私たちにとっても、都市部での居住や仕事はそのままで、二拠点生活しながら、または気になる地方への貢献という形で関わることができる「地方副業」は魅力的です。
今回は、地方副業についてのメリット・デメリット、地方副業を探すことができるおすすめサイトをご紹介します。
地方副業とは

地方副業とは、都市部の企業で働きながら、地方の仕事を副業として行う働き方を指します。
労働者不足が問題となっている日本で、特に深刻な影響を受けているのは地方企業です。
大都市圏であればそこまで難しくなく採用できる人材であっても、地方ではそもそも人が少ないため、採用自体が難しい現状があります。
しかしリモートワーク・テレワークの普及によって、地方の企業や自治体がリモートで業務を任せられる副業人材を積極的に採用し始めています。
これまでも、人材不足に悩む地方の企業や自治体が都市部に住む優秀な人材を求め、さまざまな優遇制度や福利厚生を設けて移住を促す動きはありました。
しかし、地方に生活の拠点を移すとなると、賃金水準や子供の教育環境などでさまざまなハードルがあり、実際に転職・移住する人は限られてしまいます。
そういったことから、なかなか広がることがなかった地方の人材活用ですが、コロナ禍により普及したリモートワークのおかげで、都市に居住したままリモートで地方企業の仕事を請け負うという勤務形式が受け入れられやすくなりました。
また働く人にとっては、現在勤務している企業の業務もリモート化したことで、副業に割く時間を確保しやすくもなりました。
そこで現在さまざまな地方自治体や地方企業がリモートでの人材活用に動き始めています。
地方副業でニーズの高い職種

では、地方副業をしようと思った時、どのような職種が良いのでしょう。
地方副業でニーズの多い職種の例としては、以下のようなものがあります。
リモートで出来る職種が多い
①エンジニア
WEBサイト、ECサイト制作・改修、デザイナー、システム構築など
②マーケティング
WEB集客、SEO対策、広告運用など
③企画
新規事業、商品開発、業務効率化、業務改善など
④営業
電話やWEB会議によるインバウンド・アウトバウンドセールス
⑤人事・労務
人事評価の改善、勤怠・業務管理のクラウド化、テレワーク等の働き方制度導入など
地方企業は都市部の企業に比べて、デジタル化が遅れている傾向があるため、エンジニアの募集について積極的な傾向があります。
また、商品開発、人事評価制度の見直しなど、大手企業で培った経験は地方企業にとって貴重な情報ですので、企画や人事・労務も案件として多い傾向があります。
他に、新規事業の立ち上げ経験者、ブランド戦略の経験者などの募集も多数見られます。
報酬や契約について
・報酬
報酬は時給制の案件もあれば、固定額制もあります。
時給の場合、地域や案件にもよりますが、概ね1,800~2,300円であることが多いです。
地方副業の場合、プロフェッショナルや経験者を求める傾向が多く、自己裁量の割合が多いため、アルバイト・パートといった時給制の仕事と比べると高めになっています。
また、WEBサイト制作やシステム構築は固定額制である場合が多いです。
コンサルの場合も固定額制が多く、週1日、月数万程度~とスモールスタートの案件も多く見られます。
案件によっては成果報酬制の場合もありますので、報酬の支払いについては必ず確認しましょう。
・勤務形態
勤務形態は、地方副業サイトではリモートワークであることが多いです。
しかし、中にはフルリモートではなく、現地へ出向く必要がある案件もありますので、案件を受ける際は勤務スタイルや時間、出向く場合の交通費・出張費の有無を確認しましょう。
・契約形態
契約形態は業務委託・請負であるケースが多く、パソコンやその他必要なツールについては個人で用意する必要が多いです。
パソコンは情報漏洩防止のため、勤め先で副業など個人利用を禁止している所も多いため、個人パソコンを用意すると良いでしょう。
企業側のメリット・デメリット

企業として地方副業に関わる場合「自社の社員が地方副業することを認める」立場(本業側企業)と、「地方副業人材を受け入れる」立場(副業側企業)が考えられます。
ここでは、それぞれの企業にとって、どんなメリット・デメリットがあるかを考えてみます。
本業側企業のメリット
・社員のスキルアップに繋がる
社員が副業で他社、とくに自社とは異なるローカルなビジネスを体験することで、新たな知識を習得し、経験を得ることができます。
仕事における社員の成長だけでなく、社員の自信にも繋がり、結果的に自社の事業拡大に繋がる可能性があります。
・優秀な社員の退職を防ぐことができる
働き方の多様性が広がると、優秀な社員ほど会社以外に学びの場や成長の機会を求めることが増え、それが退職につながってしまうケースもあります。
あるいは、自分のスキルを活かして地元や地域に貢献したいと考え、移住して働くために退職してしまうかもしれません。
あらかじめ企業側が副業を認めることで、こうした流出を防ぐことにつながります。
本業側企業のデメリット
・情報漏洩のリスクがある
副業全般に言えることではありますが、解禁に踏み切れない多くの企業が懸念しているのが情報漏洩のリスクです。
企業の機密情報・ノウハウや個人情報などの漏洩を防ぐため、ルール作りは必要でしょう。
・本業の業務が疎かになる恐れがある
そもそも副業は本業以外の時間に行うものです。
トータルな業務時間が増えるため、オーバーワークや体調不良により本業が疎かになる可能性があり、そうした点をどう管理するかという課題もあります。
副業側企業のメリット
・人件費を抑えることができる
企業は社員を採用するとなるとかなりの人件費がかかります。
また優秀な人材であるほど、人件費は高騰し正社員としての採用は難しいものです。
副業人材は案件ごとに募集したり、期間を限定したりと企業側で調整が可能な点がメリットです。
正社員採用は難しい人材も、副業としてであれば確保ができるかもしれません。
・外部の優秀なスキルを活用できる
新規事業の立ち上げや社員が経験したことがない業務に対して、外部の人材からスキル・ノウハウを得ることができます。
例えば、都市部は地方と比べて大企業の数や外資系企業の本社数が多く、こういった企業での知見が自社にない発想をもたらすこともあります。
副業側企業のデメリット
・管理が難しい
副業人材は本業があるため、休日や平日の就業時間以降に業務を行うことが多く、管理には工夫が必要です。
またリモートで行う場合は、コミュニケーション不足にも気をつけなくてはいけません。
リモートワーク前提で副業人材を採用している企業の多くは、一般にチャットツールを活用するなどの工夫をしています。
・情報漏洩のリスクがある
これは本業側企業のデメリットと同様で、副業側企業にも情報漏洩のリスクがあります。
地方副業のメリット

ここまで企業側の地方副業メリット・デメリットを見てきました。
ここでは、地方副業をする側のメリットをご紹介していきます。
収入アップ
副業のメリットは、何と言っても収入が増えることでしょう。
副業をする目的が収入アップという人が実は1番多いのではないでしょうか。
本業だけでは十分な収入にならない、将来のやりたいことのためにお金を貯めたいなど、総収入が増えることがメリットとなります。
地域貢献ができる
地方の企業や自治体が抱えている課題を解決することで、地域貢献につながります。
こうした関わり方ができるのは、地方副業の大きな魅力ではないでしょうか。
本業でなかなかチャレンジすることができない、こうした社会貢献性の高い仕事に関わることができます。
新たな経験やスキルが身に着く
本業で関わることがない地域の人々と仕事を共にすることで、普段は得られない経験を積むことができます。
たとえば、「観光名所の魅力をどう伝えればいいのかわからない」、「インターネットを使って発信するにはどうすればよいのか」というような課題や悩みに応えていくことで、本業にはない新しい発見や新たなスキルが身に着くでしょう。
地方副業の注意点

地方副業によるメリットは様々あります。
その反面、地方副業する上では注意しておきたいこともあります。
本業がおろそかになる
1日の大半を本業の仕事に費やしている上に、副業でさらに働くとなると、意識していなくとも疲労は溜まります。
また休日に副業をしている場合には、休める日がなくて心身ともに負担がかかってしまうでしょう。
そのために本業でミスが出たり、パフォーマンスが落ちたりしてしまうと、会社からの評価が下がってしまいます。
自分の体力や仕事のスケジュールをよく考慮して、本業に影響が出ないようバランスを考える必要があります。
出張の必要性がある
原則はリモート前提であっても、案件によっては現地で確認することなどが発生し、出張が必要となる場合もあります。
また、地方の企業や自治体が副業案件を依頼するときに、出張ありきで考えている可能性もあります。
プロジェクトがスタートする前に、出張の有無や頻度などは必ず確認しておくようにしましょう。
報酬が低い場合がある
都市部に比べ、地方は報酬が低い傾向にあります。
自身の希望とあまりにも報酬がかけ離れているようであれば、いくら仕事面で魅力を感じても、一度じっくりと検討しましょう。
交渉できるようでしたら、報酬アップが可能か確認してみてください。
地方副業で求められる人材

いざ地方副業を探し始めても、なかなか案件が決まらないという場合もあります。
また案件が決まってもうまくいかず、途中でプロジェクト終了といったケースもあります。
そこで地方副業が決まりやすい人はどんな人か、どのような人材が求められるかを見ていきましょう。
課題解決力
人材不足で困っている地方企業は多くありますので、副業人材に任せる業務も幅が広くなる傾向にあります。
そのため、課題の発見からそれらをどのように解決していくかの「課題解決力」が求められる案件が多くあります。
タスクも多くなりがちですが、上流部分から業務に携わる機会もあるでしょう。
課題を解決に導いた際には、担当者や地域住民、地場企業などから感謝され、やりがいを実感できるはずです。
コミュニケーション
地方副業の大半は、フルリモートの勤務形態になります。
そのため、チャットなどのコミュニケーションツールを使いながら、普段のやり取りはテキストベースになることが多くなります。
そうした場合に、相手の意見をくみ取りながら、自身の意見もテキストで伝えていくスキルが必要になります。
さらに、ミーティングもウェブ会議が中心になるでしょう。
対面とちがい、お互いの考えが伝わりにくいためコミュニケーションスキルが重要になります。
自己管理能力
本業の他に副業として始めるためには、自分自身の生活や体調、仕事のスケジュールをきちんと管理し、上手にコントロールする必要があります。
また、モチベーションの管理も自己管理能力の一つとなります。
地方企業の課題解決を図るには長期間にわたって改善効果が現れないことも多くあります。
そういった中でモチベーションを維持し、課題に取り組む能力が求められます。
おすすめ地方副業サイト

ここまで地方副業についてニーズの高い職種や、求められる人材についてご紹介してきました。
ここでは、すぐに地方副業を始めたいという方に、おすすめの地方副業サイトをご紹介します。
①Skill Shift
「あなたのスキルがつなぐ、地域貢献副業プロジェクト」
商品開発や営業企画、マーケティング、人事・経営企画の案件が大半を占め、課題解決に対する提案を求める企画系の案件が多いことが特徴です。
企画立案や課題解決にやりがいを感じる人におすすめです。
②ふるさと兼業
「愛する地域と共感する事業で選ぶプロジェクト型兼業」
「誰」と「何」を「いつまで」やるのかがはっきりしているプロジェクト型案件が特徴です。
兼業禁止の企業勤務であってもプロボノとして参画できる、など、応募者の状況や希望する生活スタイルに合わせて、プロジェクトを選ぶことが可能です。
より地域貢献に携わる案件を探している人におすすめです。
③HiPRO
「スキルを解放し、社会を多様にする。」
新規事業の立ち上げ、IT・DX化といったデジタル課題解決を求める企業が多く、ITエンジニアやデザイナー、マーケターの経験が活用できる案件が多いことが特徴です。
プロフェッショナルな専門知識が求められることが多いため、自身のスキルを更に高めたい方におすすめです。
④lotsful
「その体験で、キャリアをアップグレードしよう。」
プロのタレントプランナーが1人1人の経験・スキルを共に可視化・整理し、希望に合わせた案件を紹介してくれるところが特徴です。 自分の経験は何に活かせるのだろう?と不安に思っている方でも、サポートを受けることが可能です。
初めての副業におすすめです。
まとめ
今回は、地方副業についてのメリット・デメリット、おすすめの探し方をご紹介しました。
- 人材不足により副業案件を活用する地方企業が増えている
- 地方副業の多くはIT関連や新規事業の企画などが多い
- 地方副業サイトで自身に合った仕事を探そう