別荘を所有するメリットは、余暇に美しい自然環境や静寂な環境を楽しむことができる点があります。
一方で、家族の新たなライフステージへの移行、経済的・健康面の理由等で、その別荘を処分したいと考えることがあることでしょう。
しかし、別荘の売却は一般的には難しいとされており、多くの疑問と課題が浮かぶものです。
「どのように別荘の買い手を見つけるの?」
「売れるようにするにはどうしたらいい?」
今回は、別荘を処分したいと検討している方に向けて処分方法の優先順位と売却するコツをご紹介します。
別荘は所有しているだけで維持費がかかる

今までは年に数回訪れていた別荘も、家族のライフステージが変わったり、自身の健康面や経済的な理由で全く別荘を使わなくなってしまうということは誰にでもあります。
また中には、両親や親族から別荘を相続したけど、全く使わずに所有しているだけという方もいるのではないでしょうか。
別荘は使わなくても所有していることで、管理の手間や固定資産税がかかってきます。
さらに分譲別荘地の場合、土地や建物以外の別荘地域全体を包括的に管理する契約も同時に締結されています。
このような別荘地の場合、上下水道施設や街灯、ゴミの処理や巡回などの管理が不可欠になるため、その管理契約が分譲の条件となるのが一般的です。
そのため、分譲別荘地では管理費が別途発生してきます。
使わない別荘の費用を負担したり、管理をするのは誰でも嫌なものです。
また別荘所有者が高齢になってきたことで、相続などで子供たちに負担をかけたくないと考えている方は多いと思います。
そこで検討したいのが「別荘の処分」です。
別荘が売却しにくい理由

さて、別荘を処分したいと思ったら、まず知っておきたいのは「別荘は売却しにくい」ということです。
一般的に別荘の売却は、住宅地にある物件を売却するよりも難しいといわれています。
その理由は以下の通りです。
①築年数が古いものが多い
別荘の売却が難しい理由の1つとして、築年数が古いということが挙げられます。
別荘は経済的な成長とともに1970年代から多く建てられるようになり、バブル期には人気別荘地は高値で売買されていました。
しかし、この時期に建てられた別荘であれば、現在築40年を超えているものが多いでしょう。
建物そのものが古くなっているため、メンテナンスや修繕などが必要になります。
住居のように頻繁に使用しない別荘は管理が手薄になりがちで、特に全く管理されていない建物では老朽化が進みやすく、値段がつかないケースもあるでしょう。
そういった理由から、別荘としての魅力に欠けてしまっているため、売却しようとしてもなかなか買い手がつかないことが起きやすいのです。
②立地・アクセスの問題
2つ目の別荘売却が難しい理由は、アクセスが悪い場合が多いことです。
別荘地として人気が高いエリアは都市部ではなく自然が豊かな地域が中心です。
別荘利用の主な目的が「余暇を自然の中でのんびり過ごす」、「非日常を体験する」ため、郊外に建てられるケースが多いためです。
都市部を離れてゆっくり過ごすというメリットがある反面、郊外ではアクセスが不便なケースが多くあります。
交通手段が車に限られていたり、最寄り駅からの距離が離れていたりする場合は別荘に通うのが不便に思われるでしょう。
さらに別荘地は周辺施設が充実していないことも多く、一時的な滞在であっても不便を感じてしまう場合があります。
こうした不便な立地にあることが売れにくい原因の1つになっているのです。
③維持管理費がかかる
3つ目の別荘の売却が難しい理由は管理費がかかるということです。
別荘分譲地の場合、管理会社が入っていることが多く、別荘地の環境維持やゴミ集積として管理費がかかります。
その他、水道光熱費や固定資産税・都市計画税や住民税といった税金も発生します。
また、古い別荘の場合は修繕費やリフォーム費用なども必要となるケースもあり、さらに負担が大きくなってしまうでしょう。
買主にとってはこれらの負担が増えるため、管理費のある別荘地や修繕が必要な建物は懸念される傾向にあります。
別荘を処分する方法7つ

前項で別荘の売却が難しいことをお伝えしました。
そこを踏まえて、ここでは別荘の処分方法について、優先順位の高い順に7つご紹介します。
①別荘の管理会社に相談する
所有している別荘が管理会社によって管理されている分譲別荘地の場合、管理会社へ相談することで買い手に繋がるケースがあります。
別荘管理会社は一般的な不動産会社とは違うネットワークがあり、購入希望者がいるという情報や、売買実績のある会社を紹介してくれる可能性があります。
②親族や友人に譲る
親族や友人に別荘を譲ることも1つの方法です。
ただし、無償で譲ったとしても不動産の評価額により贈与税がかかる可能性があることや、別荘の維持費や管理費などのデメリットがあることを、譲る相手に説明をする必要があるでしょう。
③近隣の別荘所有者に相談
過去、別荘ブームがあった時代に開発された別荘地は土地が狭いことが多くあります。
そのため隣の所有者が「別荘の土地を広くしたい」と思っている可能性があり、相談に応じてくれる場合があります。
一般的な不動産でも「一番の顧客は近隣の人」というのが定説です。
④別荘に強い不動産会社へ売却依頼
それでもなるべく売却したいという場合は、別荘売買に強い不動産会社に査定を依頼し、売却依頼をすると良いでしょう。
プロに査定してもらうことで相場感を知ることもできますし、別荘に強い不動産会社であれば別荘売買のノウハウもあり、ニーズのある顧客へアプローチできる可能性が高いためです。
ただし、あまり安価な場合は取り扱ってくれないこともあるため注意が必要です。
⑤空き家バンクを利用する
増えていく空き家の対策として、全国の各自治体が取り組んでいるのが「空き家バンク」です。
自治体が非営利目的で行っているため、無料で登録できる場合が多いのがメリットです。
一方で、非営利目的のため不動産会社と違い積極的に販売を促してくれるわけではなく、また知名度も最近は上がってきましたが、利用者はまだ少ないためなかなか決まりにくいというのが現状です。
⑥不動産業者に買取を依頼する
親族・知人への譲渡や売却が出来なかった場合、別荘専門の買取業者に買取を依頼するのも1つの方法です。
買取の場合は、売却の手間や時間をかける必要がなく、さらに情報公開をすることなく別荘を手放せるでしょう。
ただし、相場より低い価格設定となる点は注意が必要です。
⑦費用を払って別荘を処分する
別荘を処分したい側が処分費用を払うことで、不動産を引き取るサービスもあります。
売却が困難で買い手がつかないような不動産でも、引き取りサービスであれば数十万円の費用を支払うことで処分が可能です。
固定資産税の支払いや維持管理の費用と手間を考えた場合、素早く確実に処分できるという点でメリットがあります。
しかし、売却や買取と違い、所有者が費用を捻出するため、処分・売却がこれ以上難しいという場合に検討しましょう。
二拠点生活による別荘の需要が増加

国土交通省は地域振興策の1つとして、「全国二地域居住等促進協議会」を令和3年に設立しました。
地域づくりの担い手となる人材の確保のため、都市住民が農山漁村にも生活拠点を持つ、二地域居住(いわゆる二拠点生活)の推進を図っています。
他、リクルート住まいカンパニーが2018年に行ったアンケート調査の結果によると、二地域居住を始める人は増加傾向にあり、年間17万人以上と推計されています。
また、「将来したい」「興味がある」など、二地域居住を前向きに考えている「意向者」の割合は全国の20〜60代で14%に達し、人口にすれば約1100万人という計算になります。
昨今の「パソコン1台あれば、仕事ができる」テレワークを導入した企業が増加したことにより、場所や時間に縛られることなく、働ける時代になったことで二拠点生活を始める人は年々増えています。
これらの背景から、別荘の需要が高まっており以前に比べて売却や譲渡しやすい環境になっていると言えるでしょう。
[参考]国土交通省「全国二地域居住等促進協議会」
[参考]リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(二拠点生活)に関する意識・実態」

別荘を売却するコツ

別荘の売却はさまざまな理由から難しい可能性がありますが、コツをおさえればスムーズな売却も可能です。
ここでは別荘を売却するコツをご紹介します。
メンテナンスをする
まず、別荘の売却をスムーズに進めるためには、別荘のメンテナンスをしましょう。
特に長年使用していない別荘の場合は、掃除や修繕が必要なケースが多いためです。
それらをせずに売却した場合には、買主側で購入後に別荘を使用できる状態にするための追加費用が発生してしまうため、なかなか買い手がつかなくなってしまいます。
また、手入れをされていない別荘は見た目も悪く、購入希望者に良い印象を持ってもらえない可能性も高くなります。
そのため、事前に必要な修繕や掃除などは売主側が実施し、それにかかる諸費用も負担することで何もしなかった場合より売れやすくなるでしょう。
場合によってはリフォームも検討
築年数が経っている別荘の場合、建物の劣化の他に、間取りや内装が古いということで買い手のニーズや好みにあっていない可能性があります。
壁紙や床を張り替えるなどの他にも、キッチンやお風呂といった水回りの設備も新しいものに整えることで、魅力的な別荘へと生まれ変われるでしょう。
ただし、リフォームは多額の費用が必要なため、売主にとっては負担の大きなものになります。
売却価格の相場感とリフォーム費用を試算し、リフォームをするか検討しましょう。
家具・家電は処分しなくてもいいケースも
一般住宅を売却する場合、テーブルやテレビなど前所有者の「残置物」は嫌われることが多く、全て処分する必要がありますが、別荘需要では必ずしもデメリットにならない場合もあります。
別荘利用や二拠点生活利用の場合、普段の生活している場所とは別に、新たに家具・家電を更に用意する必要があり費用もそれなりにかかってきます。
そのため、テーブルや食器棚などがそのままであることを好まれるケースもあるため、売却前に必ずしも処分せず、買い手が決まってから残置物を処分するかどうかを決めても遅くありません。
別荘売却は長期にわたることも

別荘は立地やアクセス面等から住宅地と違い需要が低いため売却しにくいと、記事の前半でご説明しました。
そのため、メンテナンスやリフォームをした状態で売却しようとしても、なかなか買い手が決まらないということもあります。
場合によっては売却に出してから数年かかるケースもあります。
そのため、売却予定の別荘は定期的に清掃やメンテナンスをして保っておく必要があります。
建物は使用していないと湿気やカビによって劣化が進むため、定期的な換気や清掃、設備の点検をすることをおすすめします。
もし売却予定の別荘になかなか訪れることができない場合は、別荘地の管理会社や清掃を行ってくれる代行業者に依頼をしてメンテナンスをしてもらうと建物の価値が下がりにくくなるでしょう。
まとめ
今回は、別荘の処分方法の優先順位と売却するコツをご紹介しました。
- 別荘は一般住宅に比べて売却しにくい
- 処分の際は管理会社、知人など身近な所から相談をする
- 別荘を売却する場合にはメンテナンスがカギ
