都市部での暮らしながらも、自然豊かな環境や地域コミュニティに興味を抱く人が増えています。
二拠点生活やセカンドハウス、あるいは地方での働き方への関心が高まる今、地方との接点をつくるための入り口として、ふるさと納税が注目されています。
税金控除だけでなく、地域と対等に関わるきっかけになるからです。
2025年10月に予定されている制度改正によって、ふるさと納税はさらに「地域らしさ」に軸足を置く制度へと変わっていきます。
今回は、ふるさと納税の基本的な仕組みと2025年10月からの改正内容を解説します。
ふるさと納税とは?まずは基本の仕組みをおさらい

まず、ふるさと納税の仕組みについて解説します。
① どういう制度?
ふるさと納税の基本は、「応援したい自治体に寄付をすることで、税金の控除が受けられ、地域の特産品などの返礼品がもらえる制度」です。
例えば給与所得者が5万円の寄付をすると、自己負担2,000円を除いた4万8,000円が所得税・住民税から控除され、さらに返礼品(地域の特産品など)を受け取ることができます。
つまり、実質2,000円の負担でそれ以上の価値の品が手に入るというお得な仕組みです。
また、控除額には上限があり、年収や家族構成、各種控除の有無によって異なります。
たとえば住宅ローン控除や医療費控除を併用している場合、その年のふるさと納税の控除上限額にも影響が出ます。
② 所得税還付と住民税控除
ふるさと納税によって、翌年に次のような税の控除が受けられます
- 所得税還付:年末調整(または確定申告)で申告することで、払った所得税の一部が返ってきます
- 住民税控除:翌年の住民税から控除されて税額が減少します
このように、税引きによって実質負担が2,000円となりながら、返礼品の価値も得られる制度となっています。
③ ワンストップ特例制度の仕組み
確定申告が不要な給与所得者などがさらに手軽に制度を利用できるのが、ワンストップ特例制度です。
条件
年間寄付先が5自治体以内(同一自治体への複数寄付は1自治体としてカウント)で、確定申告が不要な方
手続き
寄付後、「寄附金控除に係る申告特例申請書」を提出し、本人確認書類(マイナンバーなど)を添付して各自治体に郵送するだけで完了
期限
寄付した翌年の1月10日まで(郵送の場合は期限までに必着)
確定申告との違いは、寄付先の上限があること、寄付金控除すべて(約10割)が住民税からの控除になる点です。
※確定申告の場合は、所得税からの約1割の還付・住民税から約9割控除
なお、医療費控除や住宅ローン減税を利用する場合は、ワンストップ特例よりも確定申告を活用したほうが控除額が大きくなることがあるため、場合によって使い分けが推奨されます。
関係人口とふるさと納税

関係人口とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々のことを指します。
過去に滞在をしていて思い入れがある
二拠点生活などで何度も訪れている
いずれ戻りたいと思っている故郷など
地域にルーツや愛着があり、関わっている人などが該当します。
関係人口の具体例
- 決まった地域へのふるさと納税
- 都会と地方での二拠点生活
- 出身地や父母の故郷 など
ふるさと納税と関係人口の関係
前述の通りふるさと納税は、地域に直接関わる手段の一つとして「関係人口」を生み出す効果があります。
返礼品を目的とするだけでなく、地域の活動や課題に共感して寄附をすることで、地域とのつながりが生まれます。
特に、返礼品以外の寄附や体験型返礼品は、地域を知り、実際に訪れるきっかけとなるため、関係人口の増加に直結します。
関係人口を意識したふるさと納税のポイント
- 体験・交流型の寄附を選ぶ
単なる物品よりも、地域に行くきっかけや地域の人と関わる体験型プランがおすすめです。 - 使い道が明確な寄附を選ぶ
教育支援や文化保存、地域課題解決など、寄附金の使い道が具体的なものは、寄附者が関わりを意識しやすいです。 - 継続的な関わりを促す仕組み
定期的な情報発信やイベント招待、オーナー制度など、寄附後も地域と関わる仕組みがあると、関係人口が育ちやすくなります。
【2025年10月変更】仲介サイトのポイント付与が廃止

これまではふるさと納税仲介サイトなどを通じたポイント付与が広がり、私たち利用者にとっては「お得感」があるものでした。
しかしそのポイント付与が2025年10月から全面的に廃止されます。
ふるさと納税のポイント付与が禁止される理由は、付与されるポイントの高さで寄付先を選ぶ傾向が強まっていることで、ふるさと納税の本来の目的から乖離しているためとしています。
そのため、制度本来の趣旨に立ち返り、自治体の財政負担を軽減するため廃止に踏み切ったということです。
改正後の制度の着地点
以後は、地域の特色ある発展に関わる返礼品(体験・文化資源・自然・コミュニティとの接続ツールなど)が中心となります。
地域への想いに基づいた選択が促進される流れとなるでしょう。
【事例】返礼品以外で注目したい自治体の取り組み

①埼玉県入間市:児童書の充実(クラウドファンディング型)
入間市では、「児童書の充実」や「パパママ教室支援」など、子どもや家庭を支援する目的でクラウドファンディング形式の寄付を実施しています。
返礼品はなく、寄附金は活動資金として活用されることで、地域の教育基盤を強化する仕組みとなっています。

※受付が終了している場合があるため、自治体サイト・ふるさと納税サイトでご確認ください。
②神奈川県茅ケ崎市:ウェット製造体験&サーフィン体験チケット(体験型)
茅ヶ崎市では、体験型ふるさと納税として、職人と同じ道具を使い、ゼロから指導を受けながら自分でウェットスーツやウェット水着作り体験ができます。
生地の色やステッチの糸なども自由に選ぶことが可能で、完全オリジナリルのウェットスーツができます。
また作ったウェットスーツで、その日にサーフィン体験などもすることが可能です。

③新潟県内:一年を通して自然体験ができる利用券(体験型)
ふるさと納税で、新潟県内の「宿泊施設」や「体験メニュー」の対象料金から割引を受けられる「利用券(体験)」を申し込むことができます。
自然体験は、「米どころ新潟の農業体験」や「スキー&スノーボード体験」の他、川でのラフティング、パラグライダー体験など、対象メニューが豊富です。
ふるさと納税のメリット

節税効果でお得に地域を応援
ふるさと納税の大きな魅力のひとつは、税金控除による節税効果です。
寄附した金額は所得税や住民税から控除されるため、実質2,000円の自己負担で地域を応援することができます。
控除の上限は年収や家族構成によって決まりますが、自分に合った寄附を計画すれば、無理なく地域支援ができるのがうれしいポイントです。
好きな地域や活動を応援できる
ふるさと納税を通じて、応援したい地域や活動に直接関わることができます。
例えば、教育支援や伝統文化の保存、地域産業の応援など、寄附の使い道を自分で選べるので、寄附を通じて「地域に役立っている」という実感が得られます。
返礼品以外の寄附や体験型の寄附では、実際に地域の人や場所とつながることができ、より深い関係を持つきっかけにもなります。
体験や返礼品で地域を身近に感じられる
地域の特産品や宿泊券、体験型プランなどを受け取ることで、ふるさと納税はより楽しい体験にもなります。
食材や工芸品を楽しんだり、地域での体験に参加したりすることで、地域の魅力を肌で感じることができます。
特に体験型返礼品は、訪れるきっかけになるだけでなく、地域とのつながりや関係人口としての交流を自然に生む効果もあります。
社会貢献としての喜び
ふるさと納税は、地域の活性化や課題解決に役立てることができる社会貢献の手段でもあります。
自分の寄附が誰かの役に立ったり、地域の未来につながったりすることを感じられるので、単なるお金の支出以上の満足感やうれしさを得ることができます。
こうした点から、ふるさと納税は節税だけでなく、地域とのつながりや体験、社会貢献の楽しさを同時に味わえる制度として、多くの人に支持されています。
まとめ
今回は、ふるさと納税の基本的な仕組みと2025年10月からの改正内容を解説しました。
- ふるさと納税は、節税だけでなく地方との接点を築く仕組み
- 2025年10月からはポイント付与が禁止され、地域の特色を前面に出した返礼品が中心に
- 特産品や体験型返礼品を通じて、旅行・二拠点生活・移住へと関わりを広げられる