30~40代の私たちは、多忙な毎日の中で、自分の時間も、家族との時間も、なかなか思うように取れないという方も多いのではないでしょうか。
「自然の中で子育てをしたい」
「仕事と休日のメリハリをつけたい」
「新しい人脈を作りたい」
そういった方には、二地域居住・二拠点生活というライフスタイルもおすすめの1つです。
2024年5月に成立した二地域居住促進に関する法改正により、多くの自治体が、二地域居住を支援するため様々な取り組みを行っています。
今回は、二地域居住の促進に関する自治体や企業の具体的な取り組み例をご紹介します。
二地域居住とは

二地域居住は、当サイトやメディアで言われている「二拠点生活」と同義で、都会と田舎など、2つの拠点または複数の拠点を行き来するライフスタイルを指します。
主に国や自治体における地方活性に関する調査や施策において、二地域居住と使われていることが多いです。
二地域居住(二拠点生活)が注目されるようになった背景には、コロナ禍以降リモートワークが普及したことで、パソコンとインターネットがあればどこでも仕事ができる人が増えたことによります。
そのため、必ずしも職場の近い都会に住まなくても良いという風潮が広まりました。
しかし、都会は交通利便性や公共サービスの充実などメリットも多く、仕事もフルリモートワークで行っている人は少なく、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリット型の勤務形態が大半となっています。
そのため移住とは異なり、仕事や住まいを変える必要がないところが二地域居住の最大のメリットと言えるでしょう。
また、地方の活性化には、地域づくりの担い手となる人材の確保が必要ですが、人口減少が進む日本では特に地方の定住人口を増やすことが困難となっています。
そこで、政府が進めようとしているのが二地域居住というライフスタイルであり、定住人口ではなく「関係人口」を増やすという目的があります。
二地域居住に関する改正法が成立

二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「改正広域的地域活性化基盤整備法」が2024年5月に成立しました。(施行は公布から6ヵ月以内)
概要としては、「都道府県・市町村の連携」「官民の連携」「関係者の連携」を軸に、市町村単位でき家の改修、シェアハウスやテレワーク用の共同オフィスの立ち上げなどの環境整備を行うことや、計画自体を官民連携で作る協議会制度も創設するとしています。
これにより、市町村が促進計画を作成すれば、二地域居住者の住まいや職場環境を整える際に国の支援が受けやすくなり、二地域居住者にもメリットが増えるということになります。
改正広域的地域活性化基盤整備法とは
広域にわたる人や物の流れを活発にすることを通じて地域を活性化することを目的として、複数都道府県が連携して広域的地域活性化基盤整備計画を作成し地域の活性化に必要な基盤整備等の事業に対して、社会資本整備総合交付金(広域連携事業)を交付します。
国土交通省
併せて、広域的地域活性化基盤整備計画※に記載された重点地区の区域内において民間事業者が実施する拠点施設の整備に対して、民間都市開発推進機構による出資等により支援します。
市町村が特定居住促進計画を作成可能
都道府県が二地域居住に関係する「広域的地域活性化基盤整備計画」を作成したとき、市町村が二地域居住の促進に向けた具体的な施策が盛り込む「特定居住促進計画」を作成できるようになります。
特定居住支援法人の指定制度の創設
市町村長は、二地域居住促進に関する活動を行うNPO法人や民間企業を「特定居住支援法人」として指定できるようになります。
これにより市町村長は空き家や仕事、イベント等の情報を支援法人に提供できるようになり、活動しやすくなります。
特定居住促進協議会の創設
市町村は、特定居住促進計画の作成に関する協議を行うための「特定居住促進協議会」を組織できるようになります。
この協議会は、市町村、都道府県、特定居住支援法人、地域住民などが構成員として参加し、二地域居住の促進に向けた意見交換を行います。
【自治体・企業】二地域居住促進の具体な取り組み例

関係人口・交流人口と繋ぐ「那須町ふるさとアプリ」(栃木県那須町)
栃木県那須町では、地域と繋がるさまざまな「きっかけ」をつくる「那須町ふるさとアプリ」を運用しています。
このアプリを使って、提携している宿泊施設や飲食店の利用でポイントを貯めたり、町内イベント・体験情報やお得情報の閲覧、那須町へのふるさと納税することもできます。
二地域居住者をはじめとする那須町に関わる様々な人々(住民、関係人口、交流人口)が、地域とより深く繋がることを目的としています。
特にアプリ利用者へアンケートを実施することで、課題やニーズを把握し、地域活性化に繋がる施策や災害時避難場所確保等の促進を図っていきたいとしています。
二地域居住者への交通費負担(長野県佐久市)
佐久市では、2024年4月以降佐久市に転入した人を対象に、東京圏との間を行き来する際の新幹線等交通費を月あたり最大2万円まで補助するとしています。
対象者は39歳以下という制限がありますが、通勤にかかる費用を負担することで移住や二拠点生活のリモートワーカーを後押しする施策となっています。
地域活動のマッチングシステム「グッドシティ」(株式会社バイザー)
株式会社バイザーが提供している「グッドシティ」は、地域コミュニティの活性化を通して、地域課題の解決を支援する自治体向けのSDGsプラットフォームです。
具体的には自治体がプラットフォーム管理者となって、地域活動をしている人が活動情報の発信し、参加したいとのマッチングを図るサービスです。
自治体が管理者となることで、自治体からの情報発信はもちろんのこと、利用登録者が発信できる仕組みにより情報の活性化、ローカル指標の確認、分析まで一貫で行えるため、地域全体の取り組みが見える化できます。
利用者側としては、気になる地域の活動に参加することで、二地域居住先の地域と深く関わることができます。
現在、神奈川県の川崎市や松田町、愛知県小牧市などが活用しています。
異なる地域の学校を行き来する「デュアルスクール」(株式会社あわえ)
「デュアルスクール」とは、地方と都市の2つの学校の行き来を容易にし、双方で教育を受けることができる新しい学校のかたちのことです。
大人はテレワークという働き方を選ぶことができるように、学校に行っている子どもたちも地域をまたいで教育をうけることができます。
株式会社あわえが取り組む「デュアルスクール」は徳島県と三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏 等)の二つの学校が一つの学校のように教育活動を展開し、両校間を1年間に複数回、行き来できるとしています。
このような仕組みが広がっていくことで、二地域居住による生活様式の多様性だけでなく、子どもたちもそれぞれの地域と深く関わることで、多様な価値観を持つことができるでしょう。
今後も二地域居住促進施策は増えていく

リモートワークの普及や、都市部への一極集中を見直す動きが高まる中、二地域居住はますます注目を集めています。
政府や自治体も、二地域居住を促進するための様々な政策を打ち出しており、一般企業が参加することで今後、さらに取り組みが加速していくことが予想されます。
例えば、移住支援金や空き家バンクの拡充、テレワーク支援など、二地域居住を始める際のハードルを下げるための制度が整備されていくでしょう。
また、地域住民との交流を促進するためのプログラムや、地域資源を活用したビジネスモデルの創出も進んでいくと考えられます。
二地域居住は、個人にとってだけでなく、人口減少や過疎化といった、地域社会や日本全体の社会問題の解決にもつながることが期待されています。
まとめ
今回は、二地域居住の促進に関する自治体や企業の具体的な取り組み例をご紹介しました。
- 二地域居住を促進する「改正広域的地域活性化基盤整備法」が2024年5月に成立
- 上記により、自治体や企業の具体的な取り組み例が出てきている
- これから二地域居住に関する支援や施策は更に増えていく