少子高齢化や人口減少といった課題を抱える一方で、地方には都会にはない魅力がたくさんあります。
豊かな自然、伝統文化、そして温かい人々との交流。
しかし2024年、自治体の約4割が「消滅可能性都市」とされているという分析結果が発表されました。
自分の故郷や、いずれ移住したいと考えている地域が「消滅可能性都市」になっているとしたら。
わたし達が今、何ができるのか考えたいですね。
今回は「消滅可能性都市」とはどういった定義なのか、自治体の対策事例、わたし達できることを紹介します。
消滅可能性都市とは

消滅可能性都市とは、どのような定義なのでしょうか。
「消滅可能性都市」という言葉は、2014年に「日本創成会議」が消滅可能性都市として発表したリストで初めて使われ、更に2024年に「人口戦略会議」が発表した『地方自治体「持続可能性」分析レポート』でも使われています。
「日本創成会議」による分析では、
「若年女性人口が減少し続けると、出生数は低下し続け、総人口の減少に繋がる。
そのため、若年女性人口が2010年から2040年までの30年間で50%以上のスピードで急減する地域では、70年後には2割に、100年後には1割程度にまで減っていくことになり、このような地域は、最終的には消滅する可能性が高いのではないか」という結論づけています。
また、人口戦略会議では、『若年女性人口が2020年から2050年までの30年間で50%以上減少する自治体を「消滅可能性自治体」としている』と定義しています。
消滅可能性都市はどのくらいあるの?
2024年に人口戦略会議が発表した『地方自治体「持続可能性」分析レポート』によると、消滅可能性都市は全国に744自治体あるとしています。
日本の自治体総数が1,724自治体であるため、消滅可能性都市は全体の約4割に当たります。
令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート-人口戦略会議
消滅可能性都市の背景

消滅可能性都市の背景として考えられる要因は大きく2つあります。
若者の都市部への流出
就職をきっかけに、未婚の若年女性をはじめとした若者が都市部に流出することが背景の1つだと考えられています。
さらに、一度地元を出た若年女性の結婚・出産は地元では発生しないという調査結果も出ています。
少子高齢化の進行
地方自治体だけでなく、日本全体で少子高齢化が進行し、若年層が減少していることも消滅可能性自治体が生まれる理由となっています。
総務省の調査によると、2023年時点で日本の65歳以上の高齢者人口は3,623万人となっており、2000年の2,204万人と比較すると、1,000万人以上増加しています。
また、1999年以降に人口減少や少子高齢化といった社会の変化に伴い、地方自治体の財政基盤の確立を目的として、各地で市町村合併が行われました。
これによって多くの学校や役場などが中心部に統合され、結果的に若年層が旧町村域から出ていく原因ともなったと言われています。
消滅可能性都市・自治体の対策事例

日本の自治体の4割が消滅可能性都市と言われていますが、自治体としてはなるべく阻止するために、独自の取り組みを行っています。
ここでは、事例の一部をご紹介します。
長野県阿智村|観光資源を再評価、日本一の星空ツアー
阿智村は、2006年に環境省から「星が最も輝いて見える場所」に選ばれたことをきっかけに、星空をブランド化しようと考えました。
その後、2012年に「天空の楽園 日本一の星空ツアー」をスタートし、星空をエンターテインメント化。
このツアーは年々人気が高まり、2023年には累計100万人以上が訪れるほどになりました。
また地元の中学校や高校での講義や、外部メディアでの発信を通じて、地元住民の意識改革にも成功し、2019年には2,640人が参加した天体観測でギネス世界記録を達成するなど地域の一体感を醸成しました。
その結果、年々若年層の移住者が増え、地域の活性化に成功しています。
阿智村の取り組みは、地域の価値を掘り起こし、観光を基軸にした新たな街づくりを推進する成功例として注目されています。
栃木県那須烏山市|地域農林産品の高付加価値化や里山資源の活用
那須烏山市は、農業と製造業を基幹産業とする地域ですが、農業の担い手の減少や高齢化、製造業の事業所数や出荷額の減少などの問題を抱えています。
これに対処するため、地域農林産品の高付加価値化や里山資源の活用に関する人材育成を行い、販路拡大のための新商品開発を促進しました。
また、酒粕や烏山和紙などの地域特産品を活用した新たな特産品の開発や、里山の自然環境や農業の生産活動を体験する観光ツアーの開発を行い、雇用創出を目指しています。
これらの取り組みにより、地域の活性化と雇用創出に成果を上げています。
新潟県山古志村|村の人口を超える「デジタル村民」で新しい村づくり
山古志村ではNFTの仕組みを使い、変わった取り組みを行っています。
まずNFTとは「世界で一つであること」を証明できるデジタルデータで、音楽や動画、デジタルアートなど幅広い分野で発行や取引が行われています。
そのNFTを地域づくりに活用しようと、『山古志住民会議(山古志DAO)』が山古志地域の特産である錦鯉をモチーフにしたNFTアートを創作。
そのNFTアートを購入すると同時に山古志地域の「デジタル村民」になれるという仕組みを作りました。
その結果、人口約800人の小さな村で、現在「デジタル村民」は1000人を超えているといいます。
また、「デジタル村民」の中には山古志地域を訪れ、独自の文化や住民との触れ合いを楽しむ人や、雪かきなどの地域活動へ協力する人もいます。
「第二の故郷」として「帰省」するためのコミュニティ作りも行っており、関係人口創出の先進事例として、内閣の「デジタル田園都市国家構想」にも事例として紹介されています。
徳島県神山町|アート芸術の町、そしてワーク・イン・レジデンスの町へ
神山町は東京・大阪のサテライトオフィスの誘致に成功しており、”地方創生の聖地”と呼ばれています。
具体的には「神山プロジェクト」として、サテライトオフィスの誘致、ワーク・イン・レジデンスの誘致を行っています。
きっかけは国際交流、そして国内外からアーティストを招いて創作活動を支援する事業を始めた事でした。
アートを中心とした国際芸術村を作るために、アーティストへの宿泊場所やアトリエの提供を行い、その後企業への誘致と繋がっていきました。
ワーク・イン・レジデンスは、町の将来に必要と考えられる働き手や起業家を町が逆指名する制度で、町のニーズに合った移住者を募るというものです。
また、いち早く町全体に光ファイバー網の整備を行ったことで、上記のような取り組みと合わせて、東京や大阪のIT企業のサテライトオフィス誘致に繋がっているといいます。
移住以外でわたし達ができること

ここまで消滅可能性都市について説明してきました。
いずれ移住をしたいと思っているけど、移住先が消滅可能性都市になっていたら何かしら応援をしたいですよね。
ここでは移住以外で今すぐできることをご紹介します。
ふるさと納税
ふるさと納税は、自治体に寄付をすることで返礼品をもらえるというのが主な仕組みとなっています。
寄付金は自治体の地域づくりに活用されるため、自治体の多くが積極的に取り組んでいます。
寄付する側としては、返礼品を通してその地域の特産物を知ったり、農業体験や移住体験といった体験型の活用をすることで、その地域の環境や暮らしをより知ることができます。
特に体験型プログラムを実施する事業者と寄付者では、その後も継続的な関係が構築されているという調査もあるため、関係人口を増やしたい自治体にとっても効果のある仕組みとも言えます。
なかなか訪れるのは難しい場合でも、応援したい地域があれば積極的に活用したい制度です。
ワーケーション
ワーケーションとは、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた言葉で、仕事と休暇を取り合わせた形態で行われる働き方となります。
特に自営業者やフリーランス、リモートワーカーなどの柔軟な働き方を選択する人々にとって、魅力的な選択肢となっています。
仕事を兼ねた休暇であれば短期間でもワーケーションと言えますが、一般的には通常の観光旅行よりも滞在が長期化し、観光スポットよりもその地域の生活圏に触れる機会が多くなります。
こうしたことから、地域の環境に慣れ親しみやすく、定期的に同じところに通うきっかけにもなるでしょう。
二拠点生活
二拠点生活とは2つの地域に生活拠点を持ちながら暮らすことを指します。
平日は都会、休日は地方で過ごす「週末田舎暮らし」をしている人もいれば、スキーやサーフィンなど趣味のために2~3ヶ月を地方で過ごす人もいます。
旅行や観光と違い、その地域で生活をすることから「完全な移住は難しいけれど、地方の暮らしを体験したい」「まちづくりに参加したい」という人も多く、地方の活性化に繋がっていると考えられています。
リモートワーク
都会に生活拠点を置きながら、地方自治体からリモートで仕事を受注する、地方の企業と提携し、商品企画やオンラインショップの開設、広告制作をリモートで提供するなど、仕事で地方に関わるという方法もあります。
地方にとっては、人材不足を補うことができますし、仕事を受ける側としてはその地域の経済に貢献ができるでしょう。
まとめ
今回は「消滅可能性都市」とはどういった定義なのか、自治体の対策事例、わたし達できることを紹介しました。
- 消滅可能性都市となっている地域は自治体全体の約4割
- 自治体によっては、独自の取り組みで改善に向かっている事例も
- ふるさと納税やワーケーションなどで地域応援を