リモートワークが普及した昨今、若い世代を中心に地方移住の意向が高まっています。
国土交通省の2023年インターネットの調査によると、東京圏在住で地方移住へ関心のある割合は、全年齢で35.1%、20代では44.8%となっています。
2020年調査では、全年齢30.2%、20代39.2%となっており、年々関心が高まっている様子が伺えます。
今回は、地方移住に関心がある人向けに、地方移住を成功させるためのステップや支援制度についてご紹介します。
地方移住とは?

地方移住とは、都市圏(東京などの大都市)から地方に移り住むことを指します。
地方移住は、単に住居を移すだけでなく、ライフスタイルや仕事、地域コミュニティとの関わり方など、生活全体を新たな環境で築くことになります。
地方移住の形態はさまざまであり、例えば、農業を始めるために田舎に移住する場合もあれば、リモートワークを利用して静かな地方で生活を送りながら、都市の仕事を続けるという選択肢もあります。
なぜ地方移住が注目されている?
都市生活の疲弊と過密感
都市部での生活は便利である一方、混雑した公共交通機関や高い物価、仕事や生活のプレッシャーなど、ストレスを感じることも多いのが正直なところです。
特に、東京のような大都市では、生活空間が狭く、周囲の人々との接触が多いため、心身の疲れが溜まりやすくなります。
これに対して、地方では自然環境が豊かで、生活のスペースがゆったりとしているため、リフレッシュを求める人々にとって魅力的な選択肢となっています。
リモートワークの普及
新型コロナウイルスの影響を受けて、リモートワークが広がったことも地方移住が注目される理由となっています。
以前は都市部でしかできなかった仕事が、インターネットを通じてどこでもできるようになり、移住をのハードルが低くなりました。
子育て環境の向上
東京などの大都市での子育てには、住宅費や教育費の高さ、また周囲の喧騒によるストレスといった問題があります。
地方では、広い土地や静かな環境が確保されやすく、子どもが自然と触れ合いながら育つことができます。
また、地域コミュニティの支援を受けやすい点も魅力です。
こうした理由から、子育てに適した環境を求める家族層が地方移住に注目しています。
地域貢献
地方では人口減少や高齢化が進んでおり、地域経済の活性化が急務となっています。
そのため、移住者に対する支援が強化され、地方でのビジネスチャンスが増えています。
新たな地域に移住することで、地域経済の一員として貢献できることに魅力を感じる人もいます。
地方移住のメリット

続いて、地方移住のメリットを見ていきましょう。
広い住環境
東京で家を購入するとなると、狭い土地かマンションしか選択肢がないことが多く、郊外に行っても十分な広さのある一戸建ては非常に高額になります。
しかし、地方では比較的手頃な価格で広い敷地を確保し、庭付きの一戸建てを手に入れることが可能です。
庭があることで、家庭菜園やバーベキューを楽しむことができ、子供の遊び場としても最適です。
また、ペットを飼いたい家庭にとっても、都市部と比べて自由度の高い環境が整っています。
自然に囲まれた生活は、心身の健康にも良い影響を与えるでしょう。
子育てのしやすさ
自然な豊かなへ移住することで、子供たちは公園や河原、山などでのびのびと遊ぶことができます。
都市部ではなかなかできないアウトドア体験を日常的に楽しめることは、子供の成長にとって大きなメリットとなります。
また、地方では地域コミュニティが密接で、近所の人々とのつながりが強い傾向があります。
子育て世帯にとっては、地域ぐるみで子供を見守る環境が整っているため、安心して子育てができる点も魅力です。
ライフスタイルの改善
近年、リモートワークの普及により、必ずしも都市部に住む必要がなくなりました。
リモートワークをすることで通勤時間が削減され、家族との時間を増やすことができます。
そういったリモートワークを活用しながらの地方移住は、仕事の合間に自然豊かな環境で散歩を楽しむこともでき、心身共にリフレッシュできるでしょう。
都市部のようなストレスフルな環境から解放され、心身の健康を維持しやすくなります。
リモートワークが可能な仕事であれば、都市部と変わらない収入を確保しながら、より充実したライフスタイルを実現できます。
地域経済への貢献
地方では、都市部とは異なるビジネスチャンスがあります。
例えば、地方の特産品を活かした商品開発や、観光業に関連したビジネス、地域資源を活用した起業など、新たな経済活動の可能性が広がっています。
また、地方自治体では移住者向けに起業支援制度を設けていることが多く、補助金や助成金を活用することで、低リスクで新しいビジネスを始めることができます。
地方ならではの市場を開拓することで、移住者自身が地域経済の活性化に貢献できる点も魅力の一つです。
さらに、地域の人手不足を背景に、地方では医療・介護・農業などの分野での求人が豊富です。
都市部での経験を活かしつつ、地方での新たなキャリアを築くことも選択肢として考えられます。
地方移住を成功させるためのステップ

地方移住を成功させるためには、しっかりとした準備が欠かせません。
ここでは、計画的に移住を進めるための具体的なステップを紹介します。
ステップ1 目的を明確にする
まず最初に、移住の目的をはっきりさせることが大切です。
なぜ地方に移住したいのか、どのような暮らしを望んでいるのかを家族全員で話し合うことが必要です。
子どもが自然の中でのびのびと育つ環境を求めているのか、それとも生活コストを抑えながらゆとりのある暮らしをしたいのかなど、それぞれの希望をすり合わせ、優先順位を決めることが重要です。
また、仕事や住環境、教育についても考える必要があります。
現在の仕事をリモートワークで続けられるのか、地方で新たに仕事を探す必要があるのか、住まいは都市に近いエリアを選ぶのか、自然が豊かな田舎を選ぶのか。
さらに、子どものいる家庭であれば、移住先の教育環境や学校の選択肢についても事前に調べておくことが大切です。
ステップ2 住みたい地域の情報収集
移住の目的が明確になったら、次は住みたい地域の情報収集をします。
ひとくちに「地方」と言っても、都市に近い地方都市と、人口の少ない田舎では生活環境が大きく異なります。
利便性を重視するなら、地方都市や新幹線の停車駅があるエリアを選ぶのがよいでしょう。
一方で、よりのどかな暮らしを求めるなら、山間部や離島などの選択肢もあります。
気候やインフラの整備状況も重要なポイントです。
冬に積雪が多い地域では、雪かきやスタッドレスタイヤの準備が必要になりますし、車がなければ生活が不便な地域もあります。
また、病院やスーパーが近くにあるかどうかも、移住後の生活に大きく影響します。
地域ごとの特色を知るためには、自治体の移住支援サイトをチェックしたり、実際に現地を訪れてみるのがおすすめです。
短期間の「お試し移住体験」などを活用すると、移住後の生活を具体的にイメージしやすくなります。

ステップ3.仕事と収入を確保する
地方移住を成功させるためには、収入の確保が欠かせません。
現在の仕事をリモートワークで継続できる場合は、高速インターネット環境が整った地域を選ぶ必要があるでしょう。
企業によっては「ワーケーション」や「地方勤務制度」を導入している場合もあるため、事前に勤務先の制度を確認しておくとよいでしょう。
もし転職を考えている場合は、移住先の求人情報をチェックしておくことが必要です。
地方では、農業や観光業、地域おこし協力隊などの仕事が多く、IT系や専門職の求人も増えつつあります。
また、地方で起業するという選択肢もあります。
最近では、地方自治体が移住者向けの起業支援を行っていることも多いため、補助金や助成金の情報を調べてみるのもよいでしょう。
ステップ4.住まいを探す
仕事が決まったら、次は住まい探しです。
地方移住の際には、まず賃貸物件で様子を見るのか、それとも思い切って住宅を購入するのかを決めることになるかと思います。
賃貸なら移住後の生活が合わなかった場合に引っ越しがしやすいというメリットがあります。
一方、住宅を購入すれば、リフォームやDIYを楽しみながら理想の住まいをつくることができます。
最近では、自治体が「移住体験住宅」を提供しているケースもあります。
生活環境や地域の雰囲気を確かめることができるので、こういった制度を活用するのも良いでしょう。
ステップ5.実際の移住準備
住む場所が決まったら、いよいよ移住の準備を進めます。
まず必要なのが、役所での手続きです。
住民票の移動や、税金、社会保険の変更など、必要な書類を揃えて手続きを済ませておきましょう。
子どもがいる場合は、転校の手続きも早めに進めることが大切です。
自治体によっては、移住者向けのサポート窓口を設けているところもあるので、不明点があれば相談してみるのもよいでしょう。
移住後の生活をスムーズに始めるためには、地域のコミュニティに積極的に参加することも重要です。
移住者向けのイベントや交流会に参加することで、地元の人とのつながりが生まれ、新しい環境に馴染みやすくなります。
地方移住の支援制度

地方移住を検討する際、支援制度を活用することで、経済的・手続き的な負担を軽減できます。
ここでは、主な支援制度をご紹介します。
移住支援金
東京23区に在住または通勤する方が、東京圏外へ移住し、起業や就業等を行う方に、移住支援金最大200万円を給付しています。
移住支援金の対象者
- 移住元:東京23区の在住者または東京圏から東京23区へ通勤している者
- 移住先:東京圏以外の道府県又は東京圏の条件不利地域への移住者(移住支援事業実施都道府県・市町村に限る)
- 就業等:地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的起業などを実施していること
最大給付金
200万円
住宅に関する補助金
多くの自治体では、住宅の提供や引っ越し費用の一部負担、リフォーム費用の補助、家賃の補助など、住宅に関する様々な支援策を用意しています。
例えば、長野県松川村では村外から移住する人が新たに土地及び住宅を取得(購入)し、移住した場合に100万円(中古住宅は50万円)の「移住・定住促進補助金」があります。
また、空き家バンク制度を活用することで、リーズナブルな価格で住宅を取得または賃貸することが可能です。各自治体の空き家バンク情報は、各自治体の公式ウェブサイトや移住相談窓口で確認できます。
NPOや自治体の移住支援相談
移住に関する相談は、各自治体の窓口やNPO法人が運営する相談センターで受け付けています。
例えば、NPO法人ふるさと回帰支援センターは、東京・有楽町にて43都道府県1政令市の専属相談員が常駐し、移住希望者の相談に応じています。

また、福島県への移住を検討している方には、「未来ワークふくしま」が役立ちます。
このサイトでは、福島県南相馬市、田村町を始めとする12市町村の移住相談が可能です。
電話やメール相談の他、Zoom面談での相談も可能です。
地方移住を考える上での注意点

地方移住は、多くのメリットがある一方で、しっかりと準備しないと「こんなはずじゃなかった」と後悔することもあります。
ここでは、地方移住を考える上で特に注意すべきポイントを紹介します。
地域ごとの生活環境の違いを理解する
地方といっても、地域ごとに生活環境は大きく異なります。
都市部に近い地方都市と、人口が少ない田舎では、生活の利便性も違えば地域ごとの文化や習慣も異なります。
例えば、地方都市であれば、大型スーパーや病院が近くにあり、交通インフラも整っているため、生活のしやすさは比較的維持されます。
しかし、自然豊かな田舎に行くと、車がないと買い物にも苦労することがあり、冬には雪かきが必要になるなど、都市部では経験しなかった不便さを感じることもあります。
また、地域によっては独自の文化や価値観が根付いていることもあります。
例えば、昔ながらの地元コミュニティが強く、住民同士の交流が密接なエリアもあります。
そのような地域では、新しく移住してきた人が最初は馴染みにくいと感じることもあるでしょう。
一方で、移住者の受け入れが進んでいる地域では、移住者同士のコミュニティが形成され、すぐに溶け込める環境が整っていることもあります。
さらに、気候の違いも重要なポイントです。
同じ日本でも、北海道や東北のように冬の寒さが厳しい地域と、沖縄のように一年中温暖な地域では、生活スタイルが変わります。
寒冷地では暖房費がかさみ、積雪による生活の制限が発生することがあります。
一方、温暖な地域では台風や湿気の問題があるため、こうした気候の特徴を踏まえた住まい選びも必要です。
移住を検討する際には、事前に実際の生活環境をリサーチし、短期間でも現地での暮らしを体験してみることが大切です。
「お試し移住体験」などを利用すると、実際の生活イメージをつかみやすくなるでしょう。

家族と話し合い納得できる移住計画を立てる
地方移住は家族全員の生活に関わる大きな決断です。
一人の希望だけで決めてしまうと、移住後に家族との間で不満が生じ、結果的に移住が失敗に終わることもあります。
そのため、家族全員の意見を尊重しながら、納得できる移住計画を立てることが大切です。
特に、子どもがいる場合は教育環境の確認が必要です。
都市部に比べて地方の学校は選択肢が少なく、学習環境や進学の機会が限られることもあります。
また、習い事や部活動の選択肢も都会に比べると少ない場合があります。
高校や大学の進学を考えたときに、遠方の学校に通うことになる可能性もあるため、将来的な教育プランをしっかりと考える必要があります。
また、配偶者の仕事の確保も重要なポイントです。
例えば夫がリモートワークや地方での転職を考えていても、妻の仕事が確保できなければ、家計が不安定になる可能性があります。
移住を決める前に、夫婦ともに仕事を確保できるかどうかを検討し、現実的なプランを立てることが必要です。
家族全員が納得する移住計画を立てるためには、移住前にしっかりと話し合い、優先順位を明確にすることが重要です。
「どこまでの不便さなら許容できるか」「仕事や教育の条件はどうするか」など、現実的な視点でシミュレーションを行い、全員が納得できる形で移住を進めましょう。
まとめ
今回は、地方移住を成功させるためのステップや支援制度についてご紹介しました。
- 移住のメリットを理解し、ライフスタイルに合った地域を選ぶことが重要。
- 仕事や住まいの確保、移住支援制度の活用など、計画的に準備を進める。
- 地域ごとの生活環境の違いや家族の意見を尊重し、無理のない移住を目指す。