近年、都市部での生活に加えて、自然豊かな地方での二拠点生活を望む方が増えています。
特にアウトドアが趣味の方にとって、家族と共に自然の中で過ごす時間は理想の生活かもしれません。
このようなライフスタイルを実現する手段として、今「空き家バンク」の活用が注目されています。
2024年11月に施行された「改正広域的地域活性化基盤整備法」によって、地域の活性化に必要な基盤整備等の事業に対して交付金が交付されるようになりました。
そのため、空き家の活用に各自治体が取り組みを強化しています。
今回は、空き家活用が積極的になっている昨今、移住や二拠点生活の住まいとしての空き家バンクの活用について解説していきます。
住宅に関する自治体の補助金制度や、民間企業による空き家活用事例も合わせてご紹介します。
今、空き家バンクが狙い目?

近年、都市部での生活に加えて、自然豊かな地方での移住や二拠点生活を望む方が増えています。
このようなライフスタイルを実現する手段として、「空き家バンク」の活用が注目されています。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、2023年10月1日時点での全国の空き家数は約900万戸に達し、過去最多を記録しました。
これは1993年の約448万戸から30年間で倍増したことを示しており、空き家率も13.8%と過去最高となっています。
このような背景から、地方自治体では空き家の有効活用を促進するため、様々な支援策を講じています。
「空き家バンク」を通じて、手頃な価格で魅力的な物件を見つけることが可能となっており、今がまさに空き家購入の好機と言えるでしょう。
空き家バンクとは? 基本からわかりやすく解説

空き家バンクとは、各自治体が運営する「空き家情報のマッチングサービス」です。
地方にある空き家を有効活用するために、所有者が登録した物件情報を公開し、購入や賃貸を希望する人に紹介する仕組みとなっています。
登録されている物件は、築年数が経過した戸建住宅や古民家、別荘跡地など多種多様です。
価格も比較的手頃で、数十万円から購入可能なケースもあります。
登録から購入までの流れは、
- 物件情報の確認
- 自治体への問い合わせ
- 見学・交渉
- 契約
というステップで進められるのが一般的です。
現在は1000以上・約7割の自治体が空き家バンクを設置しており、二拠点生活をお得に始めたいならチェックしておきたい仕組みです。
空き家バンクのメリット・デメリット

移住や二拠点生活に活用したい空き家バンクですが、メリットやデメリットもあります。
メリット
空き家バンクの大きな魅力は、何といってもその価格の安さです。
一般的な販売価格よりも安価で購入できるケースも多く、予算を抑えて移住や二拠点生活を始めたい方には最適な選択肢と言えるでしょう。
さらに、自治体による移住支援や物件購入時のサポートが受けられる点もメリットです。
地域によっては、移住者との交流会や空き家見学ツアーなども開催されています。
地元住民とのつながりを持ちやすく、地域に溶け込んだ暮らしがしやすいという点も魅力の一つです。
デメリット
一方で、デメリットとしては、築年数が古く、リフォームが前提となる物件が多い点が挙げられます。
購入後すぐに快適に住める状態ではないケースも多く、屋根や外壁、水回りなどの修繕が必要になることが少なくありません。
また、設備の老朽化や耐震性に問題がある場合もあるため、購入前には専門家による確認が欠かせません。
物件選びで失敗しないためには、現地見学を徹底し、構造や水回りの状態、周辺環境などをしっかりチェックすることが重要です。
空き家・移住に関する補助金制度

空き家バンクを活用する際、各自治体が提供する補助金や助成金制度を利用することで、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
ここでは、自治体が行っている補助金制度の例をご紹介します。
栃木県矢板市「空家等活用支援補助金」
矢板市空き家バンクを通じて空き家を購入し、改修工事等を行う方に対し、補助金を交付します。
条件
矢板市空き家バンクに登録された物件を購入し、改修工事等を実施すること
補助対象者
次の要件をすべて満たす方となります。
- 矢板市空き家バンク制度を利用して住宅を取得した方(3親等内の親族間の取引のとき、公共工事による移転のときを除く)
- 矢板市以外の区域から転入した方
- 取得した住宅に概ね10年以上定住すること
- 取得した住宅に入居する世帯員が2名以上であること
- 市区町村が賦課する税に滞納のない方
支援金額
補助対象工事費用の2分の1
(限度額 用途地域内50万円 / その他の地域30万円)
千葉県一宮町「空き家リフォーム補助金」
移住定住促進と地域の活性化に資することを目的として、空き家のリフォーム工事に対して補助を行います。
条件
一宮町内の個人住宅について、建築基準法に規定する確認済証の交付を受けてから10年以上経過した住宅
補助対象者
町内の施工業者によりリフォーム工事を行い、次の要件などをすべて満たしている
- 補助対象住宅を新たに取得、居住し、住民基本台帳に記録されていること
- 補助対象住宅の売買契約締結から1年以内に補助対象工事を行おうとしていること
- 世帯全員が市区町村民税(国民健康保険税等を含む)等、自治体への納付に滞納がないこと
- 当該年度の2月末までにリフォーム工事が完了し、実績報告書を提出すること
- 当該リフォーム工事について、過去に一宮町で実施している他の制度による補助金、助成金又は保険給付金等の交付を受けたことがない者
- 補助金交付確定日から10年以上継続して、補助対象住宅に居住すること
支援金額
リフォーム工事に要する額の10%、上限20万円
※一宮町空き家バンクの空き家の場合は、限度額に10万円が加算
埼玉県「移住支援金制度」
東京23区に在住または通勤する方が、埼玉県内の特定地域に移住し、就業または起業した場合に支援金を交付します。
条件
対象地域への移住と、就業または起業を行うこと
補助対象者
詳しくは埼玉県の移住・定住情報サイトをご覧ください
支援金額
・単身:60万円
・世帯(世帯人員が2人以上):100万円
※18歳未満の世帯員を帯同して移住した場合は130万円から200万円(令和5年4月1日以降に対象地域に移住した方が対象)

住居以外も!民間企業の空き家活用事例

空き家は所有している個人だけの課題ではなく、その周辺地域に住む人においても治安の低下や町の魅力低下などさまざまな課題が出てきます。
そのため、国や自治体が民間企業の活用を促進するために様々な支援施策を行っています。
現在では廃校や空き店舗を使った地域交流スペースや、レンタルオフィス、その地域の特産を扱ったアンテナショップなど様々な活用がされています。
ここでは民間企業における空き家活用の一例をご紹介します。
タガヤセ大蔵(東京都世田谷区)
社会福祉法人大三島育徳会が運営している「タガヤセ大蔵」は、東京都世田谷区の「空き家等地域貢献活用事業」を活用し、築30年の木造アパートをアパートのリノベーションしたデイサービス施設です。
壁に無垢材を使うなど、デザイン性が高くて居心地のよい施設となっており、福祉施設らしくない造りとなっています。
また、地域の人にボランティアとして施設を訪れてもらい、地域交流の場となっているなど独自の取り組みをしています。
うぶすなの家(新潟県十日町市)
新潟県十日町市、津南市による「大地の芸術祭」実行委員会において、空き家と廃校をアートミュージアムとして活用する一環としてうぶすなの家が誕生しました。
うぶすなの家は、築約100年の茅葺きの民家に現代陶芸家たちによって囲炉裏やかまど、益子焼の洗面台、信楽焼の風呂などが設置され、やきものの美術館兼レストランとして運営しています。
また、貸切宿泊も可能なため、陶芸家の作品をじっくり楽しむことも可能です。

itonowa(京都府京都市)
「itonowa」は、京都市による空き家活用を促進する事業として、「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトで採択され、改修費の一部助成を受けて作られた交流型複合施設です。
十数年ほぼ使われていなかった空き家を、「糸でつながる33mのマーケット」として、「糸」に関する店舗やカフェなどの交流スペースが完備されています。
まとめ
今回は移住や二拠点生活の住まいとしての空き家バンクについて解説しました。
- 空き家バンクは一般販売の住宅より安価に購入できることが多い
- 購入前に建物や設備の確認はしっかりと、リフォーム費用の試算も忘れずに
- 情報収集をして、自治体の支援をうまく活用することが成功のカギ
