テレワークの普及により場所を選ばず仕事ができるようになったことから、都会の喧騒から離れ二拠点生活や地方移住を検討する人が増えています。
しかし、いざ移住するとなると気になるのが住宅のコストです。
そんな中「0円空き家」というタダで取得できる物件が注目を浴びています。
「タダって言っても本当はタダじゃないんでしょう」
「住める家じゃないんでは?」
と心配になる方も多いと思います。
しかし、移住人気エリアでは0円空き家を取得したいと待ちの状態になっているほど。
実際に快適に住んでいる人がいるのも事実です。
今回はそんな0円空き家についての実態と、検討する上での確認点をご紹介、また自治体が運営している0円空き家バンクもご紹介します。
0円空き家とは?

0円空き家とは、「無償譲渡物件」と言われる土地・建物価格が無償(タダ)の物件です。
無償譲渡とはいっても実際には対価が発生しないため、法律的には譲渡ではなく「贈与」にあたります。
本来、空き家等の物件売買契約は、土地・建物の周辺の市場価格や取引事例、築年数をもとに決定されます。
しかし、所有者の事情で空き家を必要としている人に無償譲渡するケースがあります。
現在は、郊外や地方の空き家物件がほとんどで、地方自治体の専門部署が窓口となって空き家物件を紹介しているケースが多いです。
なぜ0円で空き家を取得できるの?そのワケ

物件を取得したい側としては有難い話ですが、0円空き家(無償譲渡物件)がなぜ0円で出されているのか気になりますよね。
所有者が0円で物件募集を出す理由は、主に以下の3つです。
①経済的な事情
空き家は所有しているだけで、固定資産税や管理費などの金銭的負担が発生します。
また、売却できる可能性が低い土地や建物を所有している場合は、経済的事情から無償譲渡を選択する場合があります。
②空き家の管理の負担
空き家は清掃や修繕、定期的な見回りなどを行っていないと、さまざまなリスクを引き起こします。
倒壊・周辺環境への悪影響(庭木が伸びて隣接物件へ迷惑を与えるなど)だけでなく、不法投棄や不法侵入をはじめとした犯罪に巻き込まれるリスクもあり、思わぬトラブルに発展するケースも少なくありません。
空き家所有者が遠方にいるなど管理するのが困難な状況にある場合、無償譲渡が選択されることがあります。
③「特定空き家」指定のリスク
近年社会問題化している空き家問題の対策として、2015年に政府は「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称「空き家対策法」)」を施行しました。
空き家対策法とは、行政が管轄内の空き家に関する情報収集することを可能にしたり、特に管理状態が悪い「特定空き家」に対して助言または指導、勧告・命令・強制執行の措置を実施できるようにしたりなど、空き家の適正管理を推進するための手続きを定めたものです。
このとき、勧告の措置を受けた特定空き家は、固定資産税を1/6または1/3、都市計画税を1/3または2/3に減税する「住宅用地の特例措置」が解除され、本来の固定資産税及び都市計画税が課せられます。
つまり、特定空き家になると固定資産税が最大6倍になる可能性があるのです。
そのため、特定空き家に指定される前に空き家を手放す目的で、無償譲渡が選択される場合があります。
0円空き家を取得するメリット

0円空き家を取得すると、以下のようなメリットがあります。
①物件の取得費用がタダ
0円空き家なので当然ですが、物件の取得費用はタダとなります。
通常、不動産を購入するとなると、多額の費用が必要となります。
0円空き家なら不動産登記にかかる費用やリフォームの費用は必要になりますが、物件価格が0円であれば初期費用を大きく抑えることが可能です。
②補助金や助成金が活用できる
空き家の増加は国や自治体にとっても大きな課題となっています。
自治体は、無償譲渡物件の取引を活性化させることで定住化を促し、人口減少に歯止めをかけようとする目的から、特別な優遇制度や補助金を用意しているところもあります。
自治体によりますが、無償譲渡物件のリフォームや建て替えのために建物を取り壊す場合に補助金が支給される場合があります。
適用要件を満たさなければなりませんが、これらの制度を活用すれば、0円で空き家を取得できるだけでなく、リフォーム等にかかる負担も軽減できます。
補助金の金額や要件などの具体的な内容は、各自治体によって異なるため、あらかじめ確認することをおすすめします。
③自由にリフォームやリノベーションができる
0円空き家は物件取得にお金がかからないため、その分リフォームやリノベーションにお金をかけることができます。
古い空き家であってもリノベーションによってきれいに再生することができます。
空き家取得をする人は、古民家の良さを生かしつつ自分好みにリノベーションしたいというニーズが多く聞かれます。

取得前に確認したい注意点

取得費用が0円ということで、競争率の高い0円空き家。
希望者20人に対して、登録物件3件という人気の自治体もあります。
しかし、通常の売買と違って0円空き家ならではの注意点や落とし穴もあります。
ここでは取得前に確認しておきたい点をまとめました。
①書類作成や手続きが面倒
一般的な空き家の売買では、不動産仲介業者が手続きや書類作成を行ってくれますが、0円空き家(無償譲渡)の場合は、売主と買主と直接やり取りをすることが一般的であるため、書類作成や手続きは自身で行う必要があります。
必要になる主な書類と手続きは以下のとおりです。
必要書類
- 贈与契約書
- 所有権移転登記
必要な手続き
- 物件調査
- 税額の確認
- 書類の収集・作成
- 贈与契約書などの作成
- 書類を法務局へ提出
これらの作業を自ら行うのは大変なので、手続きだけ司法書士のような専門家に依頼する方法もあります。ただ、依頼した場合は費用がかかってしまいます。
なお、契約書作成費用の目安は凡そ5~10万円ほどです。
②完全に無料というわけではない
0円空き家である無償譲渡物件では、確かに空き家の取得費用はかかりません。
しかし、住宅取得時には複数の税金がかかるため、「完全に無料ではない」ことも覚えておきましょう。
以下は、無償譲渡物件を取得した際にかかる税金をまとめたものです。
◎贈与税
贈与税は無償譲渡物件特有の税金です。
贈与を受けた人(不動産の取得者)が贈与を受けた年の翌年に贈与税の申告する必要があります。
贈与金額が110万円までは無税ですが、それ以上になると贈与金額が高くなるにしたがって贈与税率も高くなります。
贈与税額を判断する際の贈与金額は、不動産の時価をもとに決定されます。
物件取得費用が0円だからといって、時価が0円になるというわけでありません。
周辺に取引事例があれば、その取引事例をもとに土地の面積や床面積から対象不動産の時価を算定する仕組みとなっています。
◎不動産取得税
取得が有償・無償であるかに関わらず課税されます。
土地・建物を取得してから数か月後に不動産取得税の納付書が送られてくるので、確実に受け取るようにしてください。
◎登録免許税
贈与によって不動産を取得した場合も所有権移転登記を行わなければならず、登録免許税が発生します。
かなり古い建物の場合には、まれに登記がされていない建物の場合もあるのであらかじめ確認が必要です。
具体的には土地家屋調査士に表題登記申請を依頼し、そのあとに司法書士に所有権の保存登記の申請依頼を行います。
◎固定資産税
固定資産税は、1月1日の土地・建物の所有者に課税される税金です。
したがって、年の途中に土地・建物の無償譲渡を受けた場合には、翌年の4~6月ごろに固定資産税の課税決定通知書と納付書が送られてきます。
都市計画税は、都市計画区域内にある土地・建物に課税される税金です。
固定資産税と同じタイミングで課税決定通知書との処方送られてきます。
郊外に存在する土地・建物を取得した場合には、都市計画区域外であれば課税されません。
③多額の修繕やリフォームが必要な場合がある
無償譲渡で引き渡される空き家のほとんどは「値段の付かない空き家」です。
そのため、建物の損傷が激しかったり、設備が劣化していたりと、そのまま住むことは難しい物件が多いのが実情です。
もちろん、こうしたマイナス部分を解消するにはリフォーム・リノベーションなどが選択肢として挙げられますが、施工内容次第では数百万~1千万円を超えるケースもあります。
特に躯体部分に大きく損傷がある物件は、リフォーム費用が高額になりがちです。
せっかく0円で空き家を手に入れたにもかかわらず、高額なリフォーム・リノベーションがかかってしまうと、無償譲渡のメリットが小さくなってしまいますから、事前に物件の状態を診断しておくことをおすすめします。
0円空き家の探し方

無償譲渡物件を探すには、主に以下の方法があります。
空き家バンク
空き家探しには欠かせないサービスでもある空き家バンクは、各自治体が主体となって運営しているサービスです。
空き家バンクは各地で増え続ける空き家問題を解決するため、自治体が非営利で取り組んでいる空き家のマッチングサービスです。
現在は500以上の自治体が参加しており、登録されている物件の中には無料の空き家もあります。
民間の専門サイトを利用する
最近では空き家でお困りの方と空き家を活用したい方とを繋ぐマッチングサービスが普及してきました。
中には、無償での譲渡を専門に扱うサイトもあるので、こうしたサイトを使えばよりスムーズに無料の空き家を見つけることができます。
その他にも
- 移住希望先の自治体で直接聞く
- 知人経由で空き家を無償譲渡してもらう
という方法もありますが、なかなか出会える確率は低いかと思います。
おすすめの自治体や専門サイト

ここでは自治体が運営している0円空き家バンクや0円空き家を扱っている自治体、サイトをご紹介します。
富山県上市町
資産価値がない空き家を「0円空き家バンク」として扱っています。
扱っている0円空き家は自治体が確認し、建物が傾いていたり屋根が崩れているような物件は登録することができないようになっています。
また、売りたい空き家所有者側に手続きや不用品処分費用として上限5万円の補助、空き家を買いたい側には条件はあるが最大345万円の補助があり、空き家課題への取り組みに積極的であることが伺えます。
0円空き家以外の移住推進も行っており、県外転入者が前年比約4.4倍になるなど地域活性に成功している地域です。
・上市町かみスイッチ(0円空き家バンクサイト)
東京都 奥多摩町
奥多摩町は2020年より、従来の年齢要件や定住要件に合致しないため空き家バンクを利用できない人、アトリエ、倉庫、別荘などを探している人向けの「0円空き家バンク」を提供開始しました。
定住よりも付随的な打ち出し方をしているため、なかなか住むには難しい物件が多いようです。
他にも若者用空き家バンクや町営住宅に15年住むと住宅がもらえる施策など、若者の定住に力を入れています。
条件としている若者とは支援施策によってことなり、35歳以下独身、または45歳以下夫婦(且つ子供がいる)等をしています。
過去に0円物件のあった自治体
0円空き家バンクを謳っている自治体はまだまだ少ないですが、時期によっては0円で募集が出ている場合もあります。
・愛媛県松山市:https://ritou-akiya.com/
2023.7月現在は0円物件は確認できませんが、20万円~と格安物件があります。
・山口県下関市:https://www.city.shimonoseki.lg.jp/soshiki/70/2597.html
2023.7月現在は0円物件は確認できませんが、20万円~と格安物件があります。
0円空き家を扱っている専門サイト
専門サイトの場合は、自治体サイトよりも物件以外の付随費用(手数料など)の確認することをおすすめします。
・みんなの0円物件:https://zero.estate/
・akisol 0円物件マッチング:https://akisol.jp/zero-bukken/
・Sumai空き家(0円物件カテゴリあり):https://akiya.sumai.biz/archives/bukken/0%E5%86%86%E7%84%A1%E5%84%9F%E8%AD%B2%E6%B8%A1
まとめ
今回は0円空き家についての実態と、検討する上での確認点をご紹介しました。
- 0円空き家とは所有者が無償で譲渡したい空き家物件
- 0円空き家は取得費用はタダだが、手続きや税金がかかる
- 自治体主導や専門サイトが増えて選択肢が多くなっている
