以前はよく訪れていた別荘も、家族のライフステージの変化により足が遠ざかることもあります。
訪れていない期間の別荘を有効活用する方法としては「別荘を貸す」ということを思い浮かべる方も多い方思います。
また昨今では二拠点生活や地方移住が注目されている中で、「別荘を借りたい」というニーズも高まっています。
しかし、実際に別荘を貸すとなるとどうすればよいのかわからないという方も多いかもしれません。
実は、別荘を貸すといっても期間によっていくつか種類が存在します。
今回は、別荘の活用方法としてよく耳にする貸別荘について、貸すメリットとデメリット、必要な許可などをご紹介します。
別荘を貸す3つの方法

訪れる頻度が低くなった別荘を有効活用する方法の一つに、別荘の貸し出しが挙げられます。
別荘を貸す場合、主に以下の3つの方法があります。
- 戸建賃貸経営
- 貸別荘経営
- 旅館業/民泊経営
貸し出す期間の長さによって、利用者との契約形態が変わったり、営業許可が必要になります。
以下に、期間による契約形態を説明します。
年単位で貸す場合
ほとんど使っていない別荘を有効活用するには、年単位で貸すことをおすすめします。
別荘を戸建賃貸物件として希望する入居者に貸し出せば、家賃収入が期待できます。
昨今はリモートワークの普及により二拠点生活などで、戸建て賃貸物件の需要が増えつつあります。
さらに、入居者が住居として利用してくれることで、清掃や手入れなどを行ってくれるため、建物の維持管理にも繋がります。
所有している別荘を管理する手間が省かれ、入居者へ売却や譲渡できる可能性も出てくるため、将来的にも使わないということであればおすすめの方法です。
但し、賃貸契約をしてくれる人を個人で探すのはかなり大変なため、不動産会社に相談してみましょう。
また、賃貸契約が成立すれば、当然別荘は入居者が居住している状態になります。
自分で別荘を利用できなくなるデメリットがあるため、シーズンによって別荘を使いたい方には不向きです。
月単位で貸す場合
使用頻度がそこまで高くない場合は、月単位で貸す貸別荘経営という方法があります。
一般的には貸別荘経営では、建物のみを貸し出し、利用者とは短期借家契約を結びます。
短期借家契約として、利用する側も気軽に借りられるため、年単位に比べて需要が見込めるというメリットがあります。
別荘地であれば、シーズンでの需要はある程度期待することができ、オフシーズンには自身も利用することができるため、自身も別荘を使いたい方にはおすすめです。
但し、運営方法に応じて適用される法律が違うため、旅館業許可が必要になる場合もあります。
日単位で貸す場合
民泊の認知度が高まったことにより、旅館業経営が注目されるようになりました。
旅館業法に基づく許可を取る必要があるため、上記2つの方法よりはハードルが高いといえますが、好きなタイミングで自分も別荘を使いたい場合にはおすすめな活用方法です。
さらに、月単位で貸す短期借家契約に比べても、1日単位で貸し出すことで1ヵ月あたりの収益が大きくなります。
旅館業免許を取得すると365日貸し出すことができ、また各種宿泊施設予約サイトに掲載可能です。
しかし営業できる日数が180日と決まっている点には注意が必要です。
観光地や別荘地などはファミリーやグループの宿泊需要が大きく、1日単位で貸し出せる別荘は、ビジネスホテルなどと競合しないため、定期的に需要を獲得することができます。
将来的に売却を検討する際も、物件に旅館業法に基づく許可が下りていれば、収益物件として評価が高まるメリットもあります。
別荘を貸すメリット

別荘を貸別荘として活用した場合、期待できるメリットは収益だけではありません。
税金対策や建物の維持管理など、別荘を貸すメリットをご紹介します。
収益化による資産の増加
別荘が空き家状態になっていると、コストばかりがかかってしまいます。
しかし、年単位や1日単位で別荘を貸し出せば、継続的な収益が期待できるでしょう。
また、旅館業法に基づく許可を取得している物件で収益の実績があれば、一般的な戸建て物件よりも資産価値が高まります。
節税対策が可能
使っていない別荘を貸別荘として活用すれば、固定資産税や相続税の節税対策が可能です。
さらに旅館業法に基づく許可を取得し、小規模宅地特例を活用すれば、固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けられる可能性があるだけでなく、相続評価額も減らせる可能性があります。
貸別荘として有効活用するための改修や増築にローンを利用した場合は、借入金をマイナス資産として計上できるため、相続評価額のさらなる減額も期待できるでしょう。
建物の老朽化を抑制
人が住んでいない家が劣化しやすい原因は、建物内の空気が入れ替わらずに湿気がこもるためです。
また、山間部の別荘地は都心よりも湿気が多い傾向があります。
貸別荘でシーズン以外にも使用されれば、建物内の空気を入れ替わり建物の老朽化を抑えることが期待できます。
特に年単位・数ヶ月単位での貸し出しの場合は利用者側で清掃や手入れも行うため、更に老朽化が抑えられるでしょう。
別荘を貸すデメリット

貸別荘は、別荘を保有するコストを回収するためにおすすめな手段です。
しかし、貸別荘を運営することによる新たなコストも発生します。
ここでは貸別荘のデメリットをご紹介しますので、検討の際には必ずご確認ください。
自身の利用が制限される
別荘利用のハイシーズンは、ゴールデンウィークや夏休みなどの長期休暇や、年末年始になります。
その場合、自身が利用したい時期と重なることも出てくるかと思います。
しかし、収益性を考えると、やはり料金設定も上がるハイシーズンにできるだけ貸して利益を上げたいと思うのも正直なところかと思います。
その為、別荘を貸す際には利用したい時に制限される可能性もあることを知っておきましょう。
思うように利益にならないことも
別荘を貸して、順調に集客できるようになるには、そのための準備や工夫が必要です。
競合となる他の宿泊施設や貸別荘の中から利用者に選んでもらうためには、認知度をあげ、魅力をアピールすることが必要になります。
また、設備投資やリフォームが必要になったり、維持するためのコストもかかってくるため思ったより利益にならないということもあります。
活用のための手続きが大変
貸別荘として別荘を有効活用するためには、様々な手続きが発生します。
1か月単位での貸別荘経営の場合、貸せる時期が限られており、貸すための手続きが煩雑であるという点が挙げられます。
また1日単位の貸し出しの場合は、旅館業法に基づく許可の申請や建築物の用途変更、不動産の登記変更など様々な手続きが必要です。
許可の申請のための書類作成などは、不動産会社や行政書士に依頼することもできますが、そうなると費用が必要になります。
運営にコストがかかる
別荘利用者からのクレーム対応や利用後の清掃、予約管理などを全て自分で行うのは大変です。
今までの別荘の維持管理費に加えて、貸別荘営業のコストもかかってきます。
忙しい方や管理・運営が難しい方は代行業者に依頼することができるので検討するのも良いでしょう。

貸別荘には許可が必要な場合も

1日単位で別荘を貸したい場合、旅館業法における許可が必要です。
旅館業法では営業形態が複数ありますが、多人数での利用を目的とした簡易宿所で許可を取りましょう。
ここでは、旅館業法における許可が必要な理由や簡易宿所営業の許可についてご紹介します。
旅館業法における許可
1日単位で別荘を貸す場合は民泊運営となり、旅館業法での許可が必要となります。
本来、土地や建物の用途・形態は、建築基準法や都市計画法で定められており、異なる用途で利用することができません。
別荘を利用しない間に民泊として運営する場合、本来の使い道とは異なり、用途規制に抵触することになるため、旅館業法の許可が必要となるのです。
簡易宿所営業の許可
旅館業法における営業の形態では「簡易宿所営業」、「旅館・ホテル営業」「下宿営業」の3種がありますが、民泊を運営する際は許可要件が最も容易である簡易宿所営業が適しています。
簡易宿所営業は宿泊する場所を多人数で共用する営業形態で、山小屋、ユースホステル、カプセルホテル等が該当します。
許可を取るためには使用する施設の構造・設備が、延べ床面積 33㎡以上や宿泊者が利用するにあたって適切な設備を要していることが条件となっています。
また、自治体によっては玄関帳場を義務付けていますので、詳細条件については国、または所在地の自治体で確認しましょう。
衛生等管理要領の確認
また旅館業法には「衛生等管理要領」という施設の衛生向上を目的としたルールが存在します。
簡易宿所営業では頻繁に不特定多数の宿泊者が入れ替わることが想定されるため、衛生上のリスクを防止するために、各自治体において細かな基準が設けられています。
許可を取り民泊サービスを提供している間は、施設が衛生基準に従って運営されているかどうか、自治体から報告を求められることがあります。
場合によっては立ち入り検査が行われます。
詳細は別荘の所在地を管轄する自治体に問い合わせてみましょう。
注意!民泊営業が禁止されていないか確認

別荘の多い長野県軽井沢町では、観光都市・保養地として自然環境の保護と秩序を保つまちづくりのため、不特定多数の人間が出入りする民泊の運営を禁止しています。
ただし、貸別荘については、町が設定した基準をクリアした場合に認められており、不特定の者に1ヶ月以上の賃貸を行う戸建ての住宅である、町内に常駐する管理運営責任者を定めるなどの合計で9つの基準が設けられています。
他にも、別荘地には「分譲規約」という、マンションの管理規約のようなものがあり、これによって民泊などの宿泊営業が禁止されている場所もあります。
別荘を貸す前に、自身の所有している別荘の分譲規約は必ず確認しておくことをおすすめします。
さらに民泊の営業許可取得の際にも、分譲規約で営業が禁止されていない旨の記載がある書面を必要書類として求められる場合があります。
その際は不動産仲介業者に分譲規約を書面でもらえるか確認しましょう。
別荘を貸す前にはリフォームも検討しよう

必ずしもリフォームが必要なわけではありませんが、内装の劣化が進んでいる場合は、旅館業法の条件をクリアするためにリフォームが必要になることもあります。
貸別荘として運用するには、サイトに掲載した写真で利用者に選んでもらう必要があるので、最低限泊まりたいと思えるイメージは大事です。
水回りや壁紙を工事するだけでもかなり雰囲気は変わりますので、費用対効果を計算して決めましょう。
また周辺に貸別荘が多くある場合は競合性も高くなるため、内装工事に力を入れるのがおすすめです。
コンセプトを打ち出したり、お洒落な内装を目指せば、利用者からも大きな反響を得られるかもしれません。
リフォームが不要の場合でも、選んでもらうためには綺麗な状態を保っておく必要があるため、定期的に本格的な清掃を行うことが不可欠です。
その場合はハウスクリーニング業者や、別荘管理サービスを行っている会社へ依頼するのも一つの手段です。
その他、貸別荘の運営代行を行っている会社もありますので、相談してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回は、別荘を貸す際のメリットとデメリット、必要な許可などをご紹介しました。
- 別荘を貸す方法は、期間によって3種類ある
- 短期間の民泊運営には旅館業法の許可が必要
- メリットとデメリットを比較した上で別荘の貸し出しを
