地方移住や二拠点生活を検討している30~50代の現役世代にとって、大きな課題の一つが「仕事」です。
現在の職場での働き方が今後も続けられるのか、リモートワークに転職や異動できるのか、といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、「リスキリング」や「リカレント教育」といった言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、「実際に何を指すのか、どんな意味があるのかはよくわからない・・・」という声も少なくありません。
今回は、リスキリングとリカレント教育とは何か、地方移住や二拠点生活においてそれらがどのように役立つのか、をご紹介します。
リスキリング・リカレント教育とは?

リスキリングとは
リスキリング(Reskilling)とは、「職種や業務に対応するために必要なスキルを学び直すこと」を指します。
特に近年では、AIやデジタル技術の進化、働き方の多様化に伴い、企業や個人が積極的にリスキリングに取り組むようになってきました。
たとえば、これまで営業職として対面を中心に活動していた人が、オンライン営業やSNSを活用したマーケティング業務に転向する場合、それに必要なデジタルツールの使い方や基本的なITリテラシーを学び直すことがリスキリングにあたります。
日本政府も「成長分野への労働移動」を促す政策の一環として、リスキリング支援に力を入れており、補助金や公的支援制度の整備も進んでいます。
単なる「スキルアップ」ではなく、「職業の再設計」に近い意味合いがあるのが特徴です。
リカレント教育とは
一方のリカレント教育(Recurrent Education)は、人生のさまざまなタイミングで「学び直しを繰り返す」という考え方です。
「働く → 学ぶ → また働く」といったサイクルを前提とするもので、日本では文部科学省や経済産業省などが推進している政策用語でもあります。
リスキリングは主に仕事に関連したスキルを、仕事を続けながら学ぶことに対し、リカレント教育は新しいスキルを大学や専門機関に入り直して本格的に学ぶケースを指すことが多いようです。
MBAのようなビジネス系の学位を取得したり、医療・福祉・教育などの新たな資格取得を目指すケースもリカレント教育に含まれます。
リカレント教育は、キャリアの持続性を重視する考え方とも言えます。
人生100年時代と言われるいま、定年や転職を機に「一度学び直して新しいステージへ」と考える人にとって、有効なアプローチです。
似ているようで異なる2つの学び
リスキリングとリカレント教育は、どちらも「社会人の学び直し」という点では共通していますが、目的や視点に違いがあります。
- リスキリング:企業や市場の変化に応じて、新たな職種・働き方に適応するためのスキル取得
- リカレント教育:個人のキャリア形成や生涯学習の一環として、自発的・中長期的に行う学び
どちらが正しいというわけではなく、むしろ両方を組み合わせることで、将来に向けて柔軟で持続可能なキャリアを築くことができます。
特に地方移住や二拠点生活を視野に入れている方にとっては、「生活スタイルに合った働き方」を選ぶための武器となるはずです。
地方移住・二拠点生活でリスキリングがなぜ重要なのか

地方移住や二拠点生活は、自然環境や暮らしのゆとりを重視するライフスタイルとして注目されています。
しかし、理想的な暮らしを実現するためには「経済的な自立」が欠かせません。
特に30~50代の現役世代にとって、安定した収入源の確保は移住・二拠点生活を実現できるかどうかのカギを握っています。
そこで注目されるのが「リスキリングによるキャリアの柔軟化」です。
都市部との雇用環境のギャップを埋める
地方には自然や広い住宅、コミュニティの魅力がありますが、一方で都市部と比べて求人の種類や数が少ないという現実もあります。
特に高度な専門職やホワイトカラーと言われる職種は選択肢が限られ、今の職種をそのまま地方で続けられるとは限りません。
こうしたミスマッチを解消するには、スキルのアップデートが必要です。
たとえば、現在営業職や販売職として対面中心の業務をしている方が、地方に移住して在宅ベースの仕事にシフトしたい場合、オンライン営業やデジタルツールの活用スキルを身につけておくことで、地方でも都市部と同水準の収入を得られる可能性が生まれます。
リモートワークという「選択肢」を得る
コロナ禍をきっかけに、働く場所を選ばない「リモートワーク型の仕事」は大きく広がりました。
IT企業やベンチャー企業を中心に、オンラインで完結する職種は増えており、実際に地方からフルリモートで勤務している人も多くいます。
しかし、どんな職種でもすぐにリモート勤務が可能なわけではありません。
たとえば、プログラミング、Webディレクション、カスタマーサポート、バックオフィス業務などは比較的リモート化が進んでいますが、それには一定の専門スキルやツール活用能力が求められます。
リスキリングを通じてそうしたスキルを習得しておくことで、物理的な距離に縛られない働き方を選べるようになります。
また、近年ではリモートワークに対応した地方企業や、地域振興プロジェクトに参画する副業的な仕事も増えており、地域とつながりながら多拠点で働く人も増加傾向にあります。
社内異動の選択肢を広げる
地方移住や二拠点生活を目指すにあたって、「今の会社を辞めずに実現したい」と考える方も多いのではないでしょうか。
実際、企業の中には部署によって働き方の自由度が大きく異なる場合があります。
たとえば、営業部門は出社必須でも、IT部門や経営企画部門、広報・人事などではリモートワークを前提とした働き方が浸透している場合もあるでしょう。
こうした場合、リモートワークが可能な部署への「社内異動」を目指すことは、転職をせずに地方移住・二拠点生活を実現するための現実的な選択肢の一つです。
ただし、そのためには「異動先で求められるスキル」を身につけておくことが重要になります。
たとえば、情報システム部門であれば基本的なITリテラシーや社内ツールの知識、広報部門であればSNS運用やライティング、企画力が求められます。
こうしたスキルをリスキリングによってあらかじめ学んでおくことで、異動の可能性を大きく広げることができるのです。
どんなスキルをリスキリングすればいい?

では、どのようなスキルをリスキリングすれば良いでしょうか。
一般的に今後も進化や需要が見込まれるスキルについてご紹介します。
ITスキル
もっとも需要が高いのがIT関連スキルです。
たとえば、以下のようなスキルは幅広い業界で活用されています。
- プログラミング(Python、JavaScriptなど)
- Web制作(HTML/CSS、WordPress)
- データ分析(Excel、SQL、Googleアナリティクス)
Webマーケティング
SNS運用や広告運用、SEOライティングといったWebマーケティングの知識は、個人事業主から中小企業まで多くの場面で重宝されます。
地方企業のオンライン販路拡大を支援する役割も期待されています。
マネジメント・プロジェクト推進
遠隔チームとの業務推進には、マネジメントスキルも欠かせません。
リーダーシップやファシリテーション、プロジェクト管理の基礎を学ぶことで、社内異動や新しい部署での活躍にもつながります。
地域密着型スキル
地方ならではの需要としては、観光業支援、空き家活用、地元特産品のブランディングなどがあります。
これらの分野でも、マーケティングや商品企画といった知識が活かされます。
リスキリング・リカレント教育の始め方

現在は、手頃な価格で始められるオンライン学習サービスが数多く存在しています。
通学の必要がなく、時間や場所に縛られずに学べる点は、忙しい社会人にとって非常に大きなメリットです。
以下に代表的なサービスをご紹介します。
■ Udemy(ユーデミー)
特徴
世界最大級のオンライン学習プラットフォームで、ITスキル、ビジネス、マーケティング、語学など幅広い分野の講座を提供。
買い切り型なので一度購入すれば繰り返し視聴可能です。
動画学習形式が中心で、講師は現役の専門家が多いという特徴があります。
料金
1講座あたり1,200円〜2万円程度(※セール時は90%以上の割引あり)

■ Schoo(スクー)
特徴
社会人向けの学び直しをコンセプトにした月額制サービスで、主にビジネススキル、デザイン、プログラミング、マネジメントなどが学べます。
生放送授業では講師にリアルタイムで質問も可能。
動画アーカイブも充実しており、隙間時間の学習にも最適です。
料金
月額980円(税込)でプレミアム会員に登録すると全アーカイブ見放題

■ GEEK JOB(ギークジョブ)
特徴
未経験からエンジニア転職を目指す人向けのIT学習+キャリア支援サービスです。
プログラミングの基礎から、実務に近い開発スキルまでを学べます。
転職成功で受講料無料となるコースもあり、30代以降の受講実績が多いのが特徴です。
料金
無料(スピード転職コースの場合/条件あり)

■ ZEN Study(ドワンゴ/N高)
特徴
プログラミング、数学、英語などを学べるアカデミック寄りのオンライン学習サービスです。
中高生向けの印象もあるが、大人の学び直しにも対応しています。
教科書的な丁寧な説明で基礎からしっかり学びたい人におすすめです。
料金
月額1,100円(税込)

まずは「小さく始める」ことが継続のコツ

最初から完璧に学ぼうとすると挫折しがちです。
関心のあるジャンルから、短時間で終わる入門講座を一つ選び、学習習慣を少しずつつくっていきましょう。
「仕事の合間に30分だけ」「通勤中に1講義」など、生活リズムに無理なく取り込める形が理想です。
前項ではオンライン学習をメインにご紹介しましたが、他にも通学形式やオンラインと通学を合せた受講スタイルなど、各サービスにはそれぞれ特徴があります。
リスキリングを始める際には「何を学びたいか」「どれくらいの時間とお金をかけられるか」を明確にし、自分に合ったサービスを選びましょう。
まとめ
今回は、リスキリングとリカレント教育とは何か、地方移住や二拠点生活においてそれらがどのように役立つのか、をご紹介しました。
- リスキリングやリカレント教育はキャリアを広げる可能性となる
- リスキリング・リカレント教育は、転職や社内異動を通じて柔軟な働き方を可能にする有効な手段
- オンライン学習サービスを活用すれば、費用を抑えて今すぐに始められる