二拠点生活・二地域居住の促進に関する改正法が今年の5月に成立しました。
これを受けて自治体間の連携、民間企業との連携や国からの支援によって、サテライトオフィスの整備や住環境の整備が進むとされています。
施設やサービスを利用する私たちにもメリットがあるとされる、「広域的地域活性化基盤整備法」とはどのようなものかをご紹介します。
二地域居住とは

二地域居住は、当サイトやメディアで言われている「二拠点生活」と同義で、都会と田舎など、2つの拠点または複数の拠点を行き来するライフスタイルを指します。
主に国や自治体における地方活性に関する調査や施策において、二地域居住と使われていることが多いです。
二地域居住(二拠点生活)が注目されるようになった背景には、コロナ禍以降リモートワークが普及したことで、パソコンとインターネットがあればどこでも仕事ができる人が増えたことによります。
そのため、必ずしも職場の近い都会に住まなくても良いという風潮が広まりました。
しかし、都会は交通利便性や公共サービスの充実などメリットも多く、仕事もフルリモートワークで行っている人は少なく、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリット型の勤務形態が大半となっています。
そのため移住とは異なり、仕事や住まいを変える必要がないところが二地域居住の最大のメリットと言えるでしょう。
また、地方の活性化には、地域づくりの担い手となる人材の確保が必要ですが、人口減少が進む日本では特に地方の定住人口を増やすことが困難となっています。
そこで、政府が進めようとしているのが二地域居住というライフスタイルであり、定住人口ではなく「関係人口」を増やすという目的があります。
二地域居住の魅力

ここでは二地域居住をすることで得られるメリットをご紹介します。
都会と地方のいいとこどりができる
二地域居住の大きなメリットは、都会の利便性と自然豊かな地方の生活をどちらも楽しめることです。
生活インフラや利便性の高いサービスは都会の方が充実しています。
その利便性を享受しながら、週末は豊かな自然がすぐそばにある地方でスキーやサーフィンなどの趣味を充実させることも可能です。
移住を気軽に始められる
住みたいと思っている地域があっても、都会と田舎のギャップに馴染めなかったらどうしよう、という方もいるかもしれません。
また仕事や就学の都合で拠点を変えることができないという人も多いかと思います。
二地域居住の良い点は、住居はそのままに別の拠点を持つため、気軽にスタートできることです。
戸建てを持ちやすい
都心部で戸建てを取得するのは、費用面でのハードルが高く難しい場合があります。
しかし、自然環境豊かな地域は土地が安く、取得しやすいというメリットがあります。
場所によっては畑付きの戸建てもあり、農業を楽しむという方もいます。
新たな人の繋がりを作れる
交友関係を広げたい人や新たなコミュニティを求めている人にも、二地域居住はおすすめです。
二地域居住をきっかけにサイクリングやキャンプなどの趣味を始めるのであれば、趣味を通して新しい人間関係を築ける可能性があります。
また、地域の行事やイベントなどに参加すれば、地元の人との繋がりができるでしょう。
普段の生活では出会うことのない人々と繋がりを持てるのも、二地域居住のメリットです。
二地域居住に関する改正法が成立

二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「改正広域的地域活性化基盤整備法」が2024年5月に成立しました。(施行は公布から6ヵ月以内)
概要としては、「都道府県・市町村の連携」「官民の連携」「関係者の連携」を軸に、市町村単位でき家の改修、シェアハウスやテレワーク用の共同オフィスの立ち上げなどの環境整備を行うことや、計画自体を官民連携で作る協議会制度も創設するとしています。
これにより、市町村が促進計画を作成すれば、二地域居住者の住まいや職場環境を整える際に国の支援が受けやすくなり、二地域居住者にもメリットが増えるということになります。
改正広域的地域活性化基盤整備法とは
広域にわたる人や物の流れを活発にすることを通じて地域を活性化することを目的として、複数都道府県が連携して広域的地域活性化基盤整備計画を作成し地域の活性化に必要な基盤整備等の事業に対して、社会資本整備総合交付金(広域連携事業)を交付します。
国土交通省
併せて、広域的地域活性化基盤整備計画※に記載された重点地区の区域内において民間事業者が実施する拠点施設の整備に対して、民間都市開発推進機構による出資等により支援します。
市町村が特定居住促進計画を作成可能
都道府県が二地域居住に関係する「広域的地域活性化基盤整備計画」を作成したとき、市町村が二地域居住の促進に向けた具体的な施策が盛り込む「特定居住促進計画」を作成できるようになります。
特定居住支援法人の指定制度の創設
市町村長は、二地域居住促進に関する活動を行うNPO法人や民間企業を「特定居住支援法人」として指定できるようになります。
これにより市町村長は空き家や仕事、イベント等の情報を支援法人に提供できるようになり、活動しやすくなります。
特定居住促進協議会の創設
市町村は、特定居住促進計画の作成に関する協議を行うための「特定居住促進協議会」を組織できるようになります。
この協議会は、市町村、都道府県、特定居住支援法人、地域住民などが構成員として参加し、二地域居住の促進に向けた意見交換を行います。
補助金など二地域居住等関連政策

国交省は二地域居住の促進として、補助金などの政策一覧を公開しています。
フラット35
フラット35は全国300以上の金融機関が住宅金融支援機構と提携して扱う「全期間固定金利型住宅ローン」です。
最長35年となる返済期間中については金利が固定され変わることがありません。
また、国がバックアップすることにより、金利が比較的低く設定されています。
条件はありますが、セカンドハウスを取得する場合にも利用可能です。
空き家対策総合支援事業
空家法の空家等対策計画に基づき市町村が実施する空き家の活用・除却に係る取組や、NPOや民間事業者等が行うモデル性の高い空き家の活用・改修工事等に対して支援します。
全国版空き家・空き地バンク
自治体が設置している「空き家バンク」は、自治体毎に開示情報の項目が異なり分かりづらく、また、横断しての検索が難しいことから、国交省で「全国版空き家・空き地バンク」を構築しています。
現在、全国版空き家バンクは、株式会社LIFULLとアットホーム株式会社の2社が運用しています。
地方移住促進テレワーク拠点施設整備支援事業
立地適正化計画を策定した市町村が、二地域居住等を促進する区域を設定した場合等に、使われなくなった公共公益施設を活用したコワーキングスペース等の整備及び移住・二地域居住に資するソフト事業への支援を行います。
共創MaaS実証プロジェクト
地域の多様な関係者が連携して行う「共創型交通」のプロジェクトのほか、地域の公共交通のリ・デザインを加速化する「モビリティ支援人材の育成・確保」や、デジタルを活用し交通とそれ以外のサービスを1つのサービスとして提供する「日本版MaaSの推進」を支援します。
デジタル実装タイプ地方創生テレワーク型の制度
「転職なき移住」を実現し、地方への新たなひとの流れを創出するため、地域に企業を呼び込むための施設開設や、施設の利用企業への支援金など、地域への企業進出の促進等に取り組む地方公共団体を支援します。
テレワークによって二地域居住が促進

二地域居住の促進に向けた個別の財政支援策はこれまでも実施されてきましたが、新制度のような枠組みで施策の展開は初めてとされています。
その背景には、新型コロナウイルスをきっかけにテレワークが一気に広まり、場所に縛られない暮らし方や働き方の可能性が高まったことが挙げられます。
一時期に比べ、テレワークより出社スタイルが増えましたというメディアの調査結果もありましたが、出社とテレワークを選択可能としているハイブリット型の企業も以前として多くあります。
そいうったことから、出社の時は都市部、それ以外は地方を拠点として生活するといった二地域居住も選びやすくなりました。
今回の改正法により、自治体間の連携や、民間企業との連携が取りやすくなることで、二地域居住をしたいと考えている人達にとっても利用できる施設やサービス、支援が増えていくと考えられます。
まとめ
今回は二地域居住の促進となる改正法と、関連施策についてご紹介しました。
- 国は地方活性化のため関係人口を増やす「二地域居住」促進・支援を行っている
- 改正法により、自治体間・民間企業・関係者との連携がしやすくなる
- 二地域居住者に対する職場環境、住環境の整備や支援が期待される