コロナ禍以降、新しい生活様式やテレワークによって私たちの価値観も大きく変わりました。
仕事中心だった生活から、メリハリのある生活をする、余暇を楽しむという考え方もかなり浸透してきたと思います。
そういった価値観の変化に伴い、二拠点生活を始める20~40代が増えてきています。
当メディアでも若年層の二拠点生活が増えていることをお伝えしていますが、
「二拠点生活って大変なのでは?」
「実際のところはどうなの?」
といった疑問も多いかと思います。
今回は二拠点生活をしている人たちの実態と、実際に二拠点生活をしてみたホンネをご紹介します。
これから二拠点生活を始めたいと思っている人は参考にしてみてください。
二拠点生活(デュアルライフ)とは

二拠点生活とは、2つの地域に生活拠点を持ちながら暮らすことを指します。
主に、都会→田舎といった環境の違う場所でメリハリのある充実した日々を過ごしたいというニーズが、ここ数年の間に増えています。
平日は都会、休日は地方で過ごす「週末田舎暮らし」をしている人もいれば、子供の長期休暇や、スキーやサーフィンなど趣味のために1~2ヶ月を地方や海外で過ごす人もいます。
移住とは異なり、仕事や住まいを変える必要がないところが二拠点生活のメリットです。
都会と田舎を行き来しながら、自分らしい暮らしを楽しむことができる二拠点生活は、新しいライフスタイルとして注目されています。
二拠点生活で「ゆとりのある暮らしをしたい」
国土交通省の「社会情勢の変化に応じた二地域居住推進施策に関する検討調査(2012年)」によると、二拠点生活を始めた理由のトップが「ゆとりのある暮らしをしたい」で、全体の約4割を占める結果となりました。
かつてのライフスタイルは、子育てのために都心ではなく、自然豊かな郊外のニュータウンや住宅地を選ぶ家族が多くを占めており、平日は都心部まで長時間通勤、週末は緑の多い住宅地でのんびり過ごすというものでした。
しかし今は、都心部での共働き世帯は年々増えており、夫婦の通勤利便性等を優先して、都市部に住まいを選ぶ傾向が高まっています。
都市部は仕事面や買い物などの生活に関する利便性がよい反面、自然を感じられる機会が少なく、目まぐるしい変化に晒されて疲れたり、孤独を感じやすいという面があります。
心のゆとりがもてる環境が欲しいということで、二拠点生活を考え始めるきっかけとなるようです。
二拠点生活しているのはどんな人?

二拠点生活をしている人は「定年後に悠々自適な生活をする富裕層」というイメージがあるかもしれません。
ここでは実際にどんな人が二拠点生活をしているのかご紹介します。
二拠点生活者は子育て世代が中心
リクルート住まいカンパニーが2018年に行ったアンケート調査の結果によると、二地域居住を開始する人は近年増加傾向にあり、2018年は年間17万人以上と推計されています。
また、「将来したい」「興味がある」など、二地域居住を前向きに考えている「意向者」の割合は全国の20〜60代で14%に達し、人口にすれば約1100万人という計算になります。
実際にしている人の属性を見てみると、年代は30代(29.1%)がもっとも多く、以下20代(27.9%)、40代(16.5%)と続いています。
そして家族構成は、「既婚、子どもあり」が4割を超えており、若い子育て世代を中心に二拠点生活をしていることがわかります。
富裕層にしかできないもの、ではない
上記と同調査で、二拠点生活をしている人の世帯年収による属性をみると、必ずしも年収が高いわけではないことがわかります。
調査結果によると、世帯年収600万円未満の人が約35%、800万円未満が半数以上を占めています。
400万円未満も約16%いることから必ずしも高収入でなくても実現可能ということがわかります。
[参考]
株式会社リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(二拠点生活)に関する意識・実態」
二拠点生活を始める人は年々増加
昨今の「パソコン1台あれば、仕事ができる」ということで、テレワークを導入した企業が増加したことにより、場所や時間に縛られることなく、働ける時代になったことで二拠点生活を始める人は年々増えています。
また、自治体によるお試し移住体験などの支援施策や、拠点の取得方法が多様化しコストを抑えて始められる等、二拠点生活をする上で、様々な選択肢がとれるようになったことも増加の後押しとなっています。
二拠点生活をする目的

二拠点生活の目的は人それぞれですが、代表的なケースをご紹介します。
趣味を楽しみたい
二拠点生活を実践している人に多い理由が「マリンレジャー・ウインタースポーツ・キャンプ」のアウトドアや、「野菜や果物など、畑を作り」といった、都会ではなかなかできない趣味を楽しみたいというものです。
海や山の近くに拠点先を構えて、余暇を最大限に利用して趣味を満喫している方が多いです。
自然豊かな環境で子育てをしたい
「子どもに自然に触れてのびのび育ってほしい」、「都会ではできないことを体験させてあげたい」というのも、二拠点生活の代表的な目的の一つです。
都会であれば、人気の公園は人が多くて思いっきり遊ぶことができなかったり、有料施設の場合は制限時間があったりしますが、田舎では思う存分遊ぶことができるというメリットがあります。
しかし、自然の中は危険も多いため、いつも以上に目を離さない、危ない場所は事前に把握しておくなどの心がけが必要です。
実家の両親や地元の友人と会う
普段は都会で暮らしながら、週末やシーズンごとに実家や地元を行き来するのも立派な二拠点生活です。
この場合、実際には二拠点生活と意識している人はほとんどいませんが、普段と環境の違うところで過ごすという点では二拠点生活と言えるでしょう。
もちろん人によっては両親の介護や家業の手伝いという場合もあるでしょう。
また、若年層で言えば地元の友人と会うために頻繁に帰るという人も多いようです。
将来は地元に戻るつもりという方もいると思いますので、このように定期的に地域や地元の人達と関わることは大切です。
単身赴任など仕事の関係
仕事の兼ね合いで、平日は業務をする場所に滞在し週末に自宅のある場所で過ごすという単身赴任も二拠点生活と言えます。
この場合、都会→地方だけでなく、地方→都会ということもあるでしょう。
週末は家族とのんびり過ごし、リフレッシュするという人が多いです。
移住前のお試しで
最近では二拠点生活が注目を浴びてきたこともあり、将来的な移住を見据えて二拠点生活を始める方もいます。
「仕事を定年退職してから」、「その土地や田舎の暮らしに馴染めるか不安」といった理由から、移住のステップとしてまずは二拠点生活として始めて、ゆくゆく移住するといった形です。
二拠点生活の良い面は、旅行などの一時的な滞在と違い、生活を通して地域との関わりがもてることです。
将来、田舎暮らしをしたいという方は、お試し移住として二拠点生活を始めるのも良いでしょう。
二拠点生活の魅力

ここでは二拠点生活をすることで得られるメリットをご紹介します。
都会と地方のいいとこどりができる
二拠点生活の大きなメリットは、都会の利便性と自然豊かな地方の生活をどちらも楽しめることです。
生活インフラや利便性の高いサービスは都会の方が充実しています。
その利便性を享受しながら、週末は豊かな自然がすぐそばにある地方でスキーやサーフィンなどの趣味を充実させることも可能です。
移住を気軽に始められる
住みたいと思っている地域があっても、都会と田舎のギャップに馴染めなかったらどうしよう、という方もいるかもしれません。
また仕事や就学の都合で拠点を変えることができないという人も多いかと思います。
二拠点生活の良い点は、住居はそのままに別の拠点を持つため、気軽にスタートできることです。
戸建てを持ちやすい
都心部で戸建てを取得するのは、費用面でのハードルが高く難しい場合があります。
しかし、自然環境豊かな地域は土地が安く、取得しやすいというメリットがあります。
場所によっては畑付きの戸建てもあり、農業を楽しむという方もいます。
新たな人の繋がりを作れる
交友関係を広げたい人や新たなコミュニティを求めている人にも、二拠点生活はおすすめです。
二拠点生活をきっかけにサイクリングやキャンプなどの趣味を始めるのであれば、趣味を通して新しい人間関係を築ける可能性があります。
また、地域の行事やイベントなどに参加すれば、地元の人との繋がりができるでしょう。
普段の生活では出会うことのない人々と繋がりを持てるのも、二拠点生活のメリットです。
二拠点生活の実態は?

二拠点生活をしている人は場所や住居はどうしているのでしょうか。
ここでは二拠点生活をしている人の中身をまとめてみました。
二拠点先の場所
二拠点生活を希望する人の多くが、住んでみたいという「憧れの地域」を二拠点先に選ぶ傾向があります。
しかし、国土交通省「社会情勢の変化に応じた二地域居住推進施策に関する検討調査(2012年)」によると、実際の二拠点生活をしている人の半数以上が「以前住んだことのある地域」や「親戚や知人のいる地域」といった身近な地域を選んでいます。
また、ほとんどの方が自分が住んでいるブロック内(関東地方・近畿地方など)で二拠点生活をしているという結果が出ています。
住居の選択
リクルート住まいカンパニーの調査では、二拠点先の住居は持ち家が6割強、賃貸が3割台半ばとの結果がでています。
また「主な住まいと2拠点目の住居形態組み合わせ」の調査結果をみると、最も多い組み合わせは「(主)【持ち家】一戸建て×(他)【持ち家】一戸建て」で16%、次いで「(主)【持ち家】マンション・アパート×(他)【持ち家】マンション・アパート」が11%となっています。
[参考]
株式会社リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(二拠点生活)に関する意識・実態」
移動にかかる時間
二拠点生活をしている人のほとんどが居住地からほど近い場所に二拠点先を構えているケースが多く、移動時間は1~2時間以内となっています。
移動時間がかかりすぎると日程的に頻繁に訪れることが難しくなりますし、その分ガソリン代や高速代などの費用もかさみます。
そのため自宅から2時間以内の場所を選択する方が多いようです。
また、交通手段は「自家用車・レンタカー」がほとんどを占めています。
地方は徒歩圏内にスーパーや飲食店がないことも多く、拠点先までの移動だけでなく滞在中も車移動がメインとなるため、車を使う人が多くなっています。
仕事
二拠点生活者のほとんどは平日は企業に勤め、週末の余暇で二拠点生活をしている方が多いです。
また、ネット環境があれば仕事ができるウェブデザイナーなどのフリーランスや、会社のテレワークを活用して二拠点先で仕事をしているという方もいます。
二拠点生活者のホンネ

ここでは実際に二拠点生活をしている人たちに聞いた「二拠点生活をしていて良かった点・悪かった点」をご紹介します。
良い点① 心身が健康になった
都会→地方での二拠点生活の場合、人混みが少なく、自然が豊かでリラックスができるという良い点があります。
また、自然の豊か環境では外で過ごすアクティビティの選択肢が多いため、必然的に体を動かすこようになり健康的になったという話を多く聞きます。
家庭菜園や貸農園で野菜を作るようになって、食生活が改善したという方もいます。
良い点② 都会と田舎の両方を楽しめる
都会・田舎のどちらにも良い点があるため、そのどちらも楽しめるというのが二拠点生活の良い点でしょう。
都会は人が多い分、常に新しいサービスが生まれ、その種類の多さや質の良さがあります。
徒歩圏内に商業施設や飲食店、医療機関も揃っており生活の利便性が都会のメリットです。
対して田舎は自然が多くのんびりしているため、季節の移り変わりが感じられ心を癒してくれます。
地域交流も多く、人との助け合いを感じられるという点も都会にはないメリットかもしれません。
良い点③ 新たなコミュニティができた
二拠点生活者の声として多かったのが、二拠点先での新たなコミュニティが出来たというものでした。
働く世代にとって、日常の人づきあいは仕事関係に限られてきてしまうものです。
しかし、都会と違い、地方は普段から近所との交流が頻繁で、助け合いによって生活が成り立っています。
そのため近所付き合いが増えその地域への関心が高まった、趣味を通して人脈が増えたことで、新たなビジネスを起こしたというケースもあります。
悪い点① 予想以上に費用がかかる
二拠点生活は住居を2つ持つため、光熱費や家賃・固定資産税などの住居費用は単純に2倍近くかかります。
もちろん、移動の費用や滞在中の費用などもかかってきます。
そして、意外と落とし穴なのが滞在中の日用品や食費。
消費量は2倍になるわけではありませんが、滞在先ではリゾート気分でいつもより贅沢をしたいというのが心理でしょう。
そういったことから思った以上に出費がかさむことがあります。
二拠点生活をする場合は、どのくらい費用がかかるか予算を立てておきましょう。
悪い点② 家の管理維持が大変
二拠点生活は普段生活していないため、行くたびに家のメンテナンスが必要ということもあります。
特に自然豊かな環境の場合は、春から夏にかけては庭に生える雑草の処理に追われるということも珍しくありません。
また中古物件や空き家を購入したという場合も、経年劣化によって補修する箇所が出てきます。
せっかくの余暇を掃除や草刈りに使いたくないという場合は、掃除代行サービスや、草刈サービスなど外注サービスも検討しましょう。
悪い点③ ネット情報があまりない
今は何かを調べる時には「まずネットで」というのが基本でしょう。
しかし、都会ではほとんどの情報がネットで調べられるのに対し、田舎であればあるほど情報はネットで調べられないのが現状です。
不動産情報、お店の営業時間、ゴミの分別・収集まで、全て現地で確認するというのが当たり前で、二拠点生活を始めたばかりの時は少し戸惑うかもしれません。
まとめ
今回は、二拠点生活をしている人たちの実態やホンネをご紹介しました。
- 二拠点生活者は20~40代が約7割強を占める
- 世帯年収は600万円以下が半数以上
- 二拠点生活は心身が健康になる、予想以上に費用がかかる